平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−73

専門分類

7

研究課題名

担癌宿主免疫能低下に及ぼす栄養学的因子の統計的研究

フリガナ

代表者氏名

ヨシオ トシフミ

吉雄 敏文

ローマ字

所属機関

東邦大学

所属部局

医学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

9 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

担癌患者において宿主の免疫能低下が知られており、数多くの研究が行われているが、栄養状態との関連については充分解明ががなされていないのが現状である。術前、術後の検査結果を利用し、多項目の臨床データに応用できる多次元解析法の手法を用いて免疫機能、及び栄養学的因子のデータ構造を検討する。


食道癌症例における壁深達度治療前後の栄養状態、免疫能について検討した。対象は食道癌11例で平均年齢は58.9才であった。栄養学的指標としては血清のアルブミン、コリンエステラーゼ、プレアルブミン、レチノール結合蛋白、尿中3−メチルヒスチジン、体重の標準体重に対する割合(%IBW)を用いた。
とくに周術期の栄養学的指標として血清トランスフェリン値に着目し、術後2週間目の値が術前値まで回復した群(回復群)と回復しなかった群(非回復群)に分け、末梢血リンパ球数(以下 lymph)、two color analysisによるリンパ球サブセット、PHAおよびConAによるリンパ球幼若化反応(以下 PHA ConA)、PPD皮内反応(長径+短径/2、以下PPD)の平均値の推移を検討した。
組織学的壁深達度と摂食障害には関連性が認められたが、栄養学的指標との相関はなかった。しかし、PPDにおいてa2以上の群では平均8.7 mmでa1以下の群の19.4mmと比較し低い傾向を示した。またPHAは、a2以上の群では平均20481cpmとa1以下の群の39144cpmと比較し低い傾向を示し、ConAは、a2以上の群では平均19127cpmとa1以下の群の30520cpmと比較し低い傾向を示した。
周術期の推移としてlymphは非回復群で1009/mm3(術後2W)、1056/mm3(術後4W)と回復群の1647/mm3(術後2W)、1809/mm3(術後4W)と比較し有意に低く推移した。PHA,ConAともに非回復群で術後2Wにそれぞれ11677cpm,6941cpmと基準値を下回り、回復群の23909cpm,29038cpmと比較し、有意に低く推移した。
壁深達度と術前の免疫抑制とは関連性が認められたが、それぞれ栄養障害との関連ははっきりしなかった。しかし周術期の蛋白代謝がこの時期の免疫能に影響する可能性が示唆された。また食道癌における術後蛋白代謝の良否は壁深達度とならんで宿主免疫能と関連する可能性も示唆された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

鷲沢尚宏,食道癌の壁深達度と栄養障害および周術期の免疫能,癌免疫外科研究会,H5/5/20
鷲沢尚宏,食道癌における術前術後の栄養状態の推移と免疫学的指標との関連性,東邦医学会,H5/2/19

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究の実施にあたっては、統計的解析法の開発は統計数理研究所の教官が担当し、実証的臨床データの計測・測定などは東邦大学医学部外科学第一講座の教官が当たる。
(1)担癌患者の臨床検査データの収集、データベース化を行う。(2)臨床データの多次元解析法および時系列分析など統計データ解析法による原疾患の危険因子の抽出、予後の予測と栄養管理の方法が各データに与える影響を検討し、これらの方法論の開発研究を行う。
以上実践的な臨床検査の多項目データを統計データ解析により解析し、栄養状態と免疫機能のデータ構造を分析する。併せて癌危険因子の抽出法に最適なデータ解析法の開発研究を行う。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小林 一雄

東邦大学

駒澤 勉

統計数理研究所

佐藤 行彦

東邦大学

辻田 和紀

東邦大学

中村 博志

東邦大学

本田 亮一

東邦大学

鷲澤 尚宏

東邦大学

渡邊 聖

東邦大学