平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−79

専門分類

7

研究課題名

蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率の推定

フリガナ

代表者氏名

ハシモト テツオ

橋本 哲男

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

アミノ酸相互の置換確率(推移確率行列)を推定することは、蛋白質の進化過程を確率モデルとして記述してデータ解析を行なうのにあたり必要不可欠なものである。すなわち、蛋白質の相同性解析、分子系統樹の推定などの方法論的基礎となるものである。本研究は、最近の新しい蓄積データをもとに、現実のアミノ酸置換の過程を良く表現する推移行列を推定することを目的とする。


蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率を推定し、相同性探査、分子系統樹の推定、などの分子進化学的解析を行なう際の確率モデルとして適用することを目標に研究を行なっている。
本年度は、置換確率推定に至るための集計を行なう準備段階として、各種保存的蛋白質の近縁種間でのアライメントを試みた。
まず、進化の過程で保存的である蛋白質として、DNA-dependent RNA polymerase, Elongation factor, ATPase,各種リボソーム蛋白質、などに注目し、これらの一次構造データを遺伝情報データベースから収集し整理、統合した。次に、真核生物、古細菌、真正細菌の三大生物群、および、葉緑体、ミトコンドリアなどのオルガネラ、のそれぞれについてアライメント構築を試みた。
また、葉緑体で機能している蛋白質、photosystem II D1 protein, ribulose 1,5- bisphosphate carboxylase/oxygenase 、および、脊椎動物ミトコンドリアゲノムにコードされている各種蛋白質についても同様にアライメントを構築した。
三大生物群、およびオルガネラを通して存在する保存的蛋白質については、生物群内部での変異はアミノ酸置換が主であったのに対し、生物群間では、大幅な挿入、欠失が生じていた。今回取り上げた蛋白質の中では、Elongation factor 1αが最も保存的であることが明らかとなり、全生物界を通しての分子系統学的解析を行なうような際には、この蛋白質を用いるのが適切であると考えられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

真核生物、古細菌、真正細菌、の三大生物界別に解析の対象とする蛋白質ファミリーを選定し、近緑種間でのアミノ酸配列のアライメントを行なう。これをもとにアミノ酸ペア間の相互置換頻度を集計する。集計方法はDayhoffら(1972,1978)に準ずる。つぎに、このような置換行列が、異なる蛋白質同士でどの程度共通か、三大生物界での間では違いが見られるか、真核生物の中でもミトコンドリア、葉緑体などのオルガネラと核とではどのような違いがあるか、などを調査し、それらの結果を十分考慮したうえで、現実のアミノ酸置換の過程を最も良く表現する推移行列の推定を行なう。また推定の方法については、統計的な観点からの検討も加える。データの収集、整理、解析を効率よく進めるために、統計数理研究所における共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岸野 洋久

東京大学

長谷川 政美

統計数理研究所