平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−34

専門分類

5

研究課題名

平面や球面の分割と、流体力学への応用

フリガナ

代表者氏名

タカギ リュウジ

高木 隆司

ローマ字

所属機関

東京農工大学

所属部局

一般教育部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

平面や球面の分割は,幾何統計学の重要な問題である。一方,流体力学には,この問題の解析結果を応用できる現象がある。例えば,球形液滴の振動,平面流体層中の熱対流モード,等である。本研究では,これらの現象の解析に対して,幾何統計学の手法を適用して,それらのパターンの性質や,形成の機構を調べる。


前年度に引き続いて、球面上の分割の性質に関する統計学的な研究、およびその液滴振動モード解析への応用を行った。
半径1の球面を、球帽(球面上の円)でランダムに充填するときの充填率(球帽の数の細密充填数に対する比)を、数値シミュレーションによって求めた。細密充填数が2から32までについて、結果を求めたが、細密充填数が10を越えると、平面の場合充填率が0.603 に近づくことがわかった。次に、球面上に初期に与えた乱雑な点配置から、適切に設定した調節モデルを用いて、最終的な点配置をもとめた。その結果、各点のボロノイ多角形は、平均として6角形であり、5角形や7角形が少し混ざるようなパターンが得られた。点の数が11〜50の範囲で、調節モデルの結果として、最適点配置を求めた。それによれば、12個の場合は正12面体に、32個の場合は炭素の化合物C60に類似のパターンに収束することが示された。その他の場合は、多少の不規則性が残った。
水中に中立浮遊させた半径1.5cm の球形油滴に、細い棒を接触させて振動する外力を与え、共鳴して生じた基準振動を観察した。1個所で刺激した場合、振動モードは単一の球面調和関数で表すことができ、基準振動数の値は流体力学的に求めた理論値とよく一致した。2個所で刺激した場合、正多面体の構造を持つ基準振動が現れる傾向がみられた。正多面体の形が、球面調和関数の重ね合わせで表現できることを示した。共鳴振動数の実験値は、理論値とだいたい一致した。正多面体の構造が出やすいということは、上に述べた数値シミュレーションで、12個の点の最適配置がどんな初期条件から出発しても、正12面体に落ちつくことに対応していると思われる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

M.Tanemura: On the density of strict random complete parking by disks.Ann.Inst.Statist.Math,to Appear (1992).
種村正美:球面における配置の問題,統計数理研究所共同研究リポート37,p.54 (1992).
Y.Arai, K.Adachi & R.Takaki : Spherical Harmonic Functions for Expression of Polyhedral Vibration of a Spherical Drop,FORMA 6 ,193 (1991).
高木隆司 ,「形の数理」朝倉書店(1992,2月).
新井洋二,高木隆司,球形液滴の振動モードの観察 ,統計数理研究所研究会 ,「球面上の形態形成と情報処理II」 1992年1月24日.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平面や球面の分割に関する統計的な研究は,従来まで統計数理研究所の理工学関係部門で研究されている。一方,本研究代表者(高木)は,上記のような流体力学におけるパターン形成の問題を研究してきた。ところが,乱雑なパターンを含む場合については,統計学的な処理が必要である。そこで,共同研究によって新たな成果が期待される。
共同研究においては,代表者の研究室において実験的に得られた分割パターンを基にして,ボロノイ分割との類似性などの統計的性質の計測,調整モデルによる時間発展の予測と実験との比較,等を行う。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所