平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2002

専門分類

1

研究課題名

拡散過程の統計的推測と数理ファイナンスへの応用

フリガナ

代表者氏名

ウチダ マサユキ

内田 雅之

ローマ字

Masayuki UCHIDA

所属機関

九州大学

所属部局

大学院数理学研究院

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

(研究目的)拡散過程モデルにおける数理ファイナンスは現在まで確率解析の応用分野として活発
に研究が行われている。しかし,膨大な数のファイナンスのデータがあるにも関わらずそのデータ
は使われることなく確率解析による理論だけが先行していて,統計的なデータ解析があまり行われ
ていない。その理由として,拡散過程モデルに従うデータが得られた時の統計的推測の理論がまだ
整備されていないことが挙げられる。また,オプションの価格付けやポートフォリオの最適化など
を行う際に,拡散過程の汎関数の期待値を計算する必要があるが,一般に明示的な形式で求められ
ることはまれで,そのため近似式を得ることが望まれる。これを考慮すると,一般の拡散過程では
なく,小さな拡散をもつ拡散過程モデルを仮定した方が,データに基づいたオプションの価格付け
やポートフォリオの最適化などには,より強い結果が得られると思われる。そのため本研究では小
さな拡散をもつ拡散過程モデルの下で離散観測データが得られた時の統計的推測及び数理ファイ
ナンスへの応用を目的とした。特にパラメータの推定については,ドリフトのパラメータだけでは
なく,拡散係数(ボラティリティ)のパラメータの推定が必要となる。
(成果)小さな拡散をもつ拡散過程モデルに従う離散観測データが得られた時のドリフト及び拡散
係数のパラメータの推定については,一致性と漸近正規性をもつ推定量の導出を行った。特に,小
さな拡散パラメータの値と離散観測の刻み幅との関係を明確にして,リーズナブルな仮定の下で漸
近正規性が成り立つことを証明した。漸近論の立場からマルチンゲール推定関数の構成が一つの鍵
となるが、一般に明示的な形式をもつとは限らない。そこでマルチンゲール推定関数の構成に必要
な条件付き期待値と条件付き分散を近似することによって導出された推定関数を用いた。さらに,
その推定関数から得られた推定量を使って,オプションの価格の推定を行った。これに関しては,
歴史的によく使われている伊藤解析に加えて,ウィナー空間上の微積分であるマリアヴァン解析が
有効であった。マリアヴァン解析と漸近理論の手法の一つである統計量の分布の漸近展開を数理フ
ァイナンスに応用することにより,オプションの価格などの重要な指標が高精度で近似される。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(論文及びプレプリント)
離散観測における拡散過程の統計的推測については,
Uchida,M.(2002).Estimation for discretely observed diffusion processes with small
dispersion parameter,Research Memorandum No.854,The Institute of Statistical Mathematics,
Tokyo,Japan.
小さな拡散をもつ拡散過程におけるオプションの価格の推定については,
Uchida,M.and Yoshida N.(2003).Asymptotic expansion for small diffusions applied to option
pricing,(revised).
(学会発表)
平成14年9月10日(火)
日本統計学会(明星大学)
離散観測に基づく拡散過程の推定
内田 雅之(九州大学)
平成14年9月28日(土)
日本数学会(島根大学)特別講演
離散観測における拡散過程の統計的推測
内田 雅之(九州大学)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

阪本 雄二

広島国際大学

吉田 朋広

東京大学