平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2040

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

1

研究課題名

一般化エントロピーの幾何学と統計学

フリガナ

代表者氏名

ヘンミ マサユキ

逸見 昌之

ローマ字

Henmi Masayuki

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

52千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年の複雑系科学の発展からベキ型分布に従う現象が数多く発見され、これを最大化エントロピー原理で説明するために、統計物理学を中心とする分野で導入されたTsallisエントロピーという概念が注目を集めている。これに関して最近、本研究の分担者らによって、情報幾何学の観点から新たな知見が得られている。例えば、この分野ではエスコート確率と呼ばれる新しい概念が重要な役割を果たすが、これがもとの確率分布の射影変換によって得られることが示され、さらにそれに基づいて、この世界で幾何学的に自然な基準(双対平坦性)から決まる統計多様体の構造が、これまでに考えられていた統計学的に自然な基準(確率測度変換に関する幾何構造の不変性)から決まる統計多様体の構造(Fisher計量とアルファ接続)と異なることが示された。

このように幾何学的観点からは一定の成果が得られているが、Tsallisエントロピーに関する研究は統計物理学を動機としたものが多く、統計学的な研究は不十分である。そこで本研究では、幾何学的および物理学的な議論との関連を踏まえながら、この分野に現れるさまざまな概念の統計的意味や役割を解明することを主な目的とする。
また、Tsallisエントロピーは(通常の)エントロピーの一般化の1つの可能性に過ぎず、他にも様々な一般化エントロピーが提案されている。本研究ではそれらにも注目し、その意味や役割、お互いの関係などについても考察する。そして本研究を通じて、数学(幾何学)、物理学(統計物理学)、統計学の観点からの問題意識を照らし合わせながら、互いに刺激を与え合うことで、有益な異分野交流となることも目指す。

本年度は、q-独立性(通常の独立性のある種の一般化)と呼ばれる、q-最尤推定の基礎となる概念について、その統計的意味に関する議論を行った。まだ、統計的側面についての成果は出ていないが、次年度以降も継続して、他の課題も含めて議論を行い、成果を論文等にまとめ、発表を行う予定である。また、本研究は数学(幾何学)や物理学(統計物理学)との交流という意味合いも有するものであるが、それぞれの立場からは、以下のような成果が出ている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表

A.M. Scarfone and T. Wada (2014)
Legender structure of kappa-thermostatistics revisited in the framework of information geometry,
J. Phys. A: Math. Theor. 47 275002(17pp).

T. Wada and A.M. Scarfone (2014)
Information Geometry on the kappa-Thermostatistics,
Entropy 17(3), 1204-1217.

H. Matsuzoe (2014)
Hessian structures on deformed exponential families and their conformal structures,
Diff. Geom. Appl. 35, Suppl., 323-333.

H. Matsuzoe (2015)
Information geometry of Bayesian statistics,
Bayesian Inference and Maximum Entropy Methods in Science and Engineering,
AIP Conference Proceedings 1641, 279-286.

口頭発表

機械学習における情報幾何学的視点
(Workshop: Information Geometry for Machine Learning)
理化学研究所,脳科学総合研究センター,2014年12月5日
H. Matsuzoe
Geometry of Deformed Exponential Families (招待講演)

The 4th International Colloquium on Differential Geometry and its Related Fields, St. Cyril and St. Methodius University of Veliko Tarnovo,
Veliko Tarnovo, Bulgaria, September 9, 2014
H. Matsuzoe
Geometry of deformed exponential families(招待講演)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会の開催は特に行っていない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

松添 博

名古屋工業大学

和田 達明

茨城大学