平成292017)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

29−共研−2001

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

2

研究課題名

連続型疑似乱数の局所一様性の研究

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ ナガトモ

中村 永友

ローマ字

Nakamura Nagatomo

所属機関

札幌学院大学

所属部局

経済学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

61千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

【研究の目的】
 大規模なシミュレーションを行う際に,特定の確率分布にしたがう乱数を超大量に生成するには,質の良い一様乱数をいかに入手することが話題の中心であった.物理乱数が使えない環境では,長周期の疑似一様乱数(メルセンヌ=ツイスター法等)がRをはじめとする,かなり多くの数値計算が可能な環境で用いることができるようになった.一様乱数から特定の確率分布にしたがう乱数を得るためには,種々の方法があり,正規乱数を生成する方法はBox=Muller法が標準的である.しかし,超多数個を高速に生成する方法として,目的の確率分布を近似した離散型確率分布にしたがう乱数を通して,目的の疑似乱数を生成する方法を提案した(Nakamura, 2015; 中村・土屋, 2015,2016).この方法は少なくともBox=Muller法よりも演算回数が少なく,同時に高速な方法である.
 この方法の理論的背景を証明するために,次の命題を提示した.

[命題]:連続型確率分布にしたがうどんな乱数も,微小な区間においては,ある一定条件下で一様分布と見なせる.

 この逆の発想から,次の手順で連続型の疑似乱数を生成することができる.(1)目的の連続型確率分布を近似した離散確率分布を用意する,(2)離散確率分布の各ビンの微小区間内で,その確率に比例した個数の一様乱数を生成する.この方法によって全体としては目的の連続型確率分布に従う疑似乱数が得られる.
 この方法で生成された乱数は工学的には十分耐えうることが数値実験で示されているが,さらに詳細な条件を加味しながら実用上適用可能な条件を提示することと共に,本研究の最終的な目的は[命題]の数学的な証明である.

【研究の成果】
 今年度の成果としては,オイラリアン分布を通した正規分布の裾の乱数を超大量に生成するアルゴリズムの提示と有効性を示したことである.また,局所一様性を利用して,オイラリアン分布ではなく二項分布を通した正規乱数の生成アルゴリズムを提示したことである.具体的成果は次に示す.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

2017年度(平成29年度)において,本研究テーマに関係する成果としてしては,以下が挙げられる.

中村 永友・土屋 高宏,二項分布からの正規乱数生成(Normal Random Number Generation via Binomial Distribution),札幌学院大学総合研究所紀要(Proceedings of the Research institute of Sapporo Gakuin University), 5, 1-6, 2018.3.20. (http://hdl.handle.net/10742/00003119)

この論文は,二項分布B(n,0.5)を基礎とする乱数生成を通して,正規乱数を生成するアルゴリズムを与えたものである.簡単に説明すればnが十分大きくして,各ビン内で適宜連続化することで,全体として正規乱数ととなるための条件を示したものである.


中村永友・土屋高宏,正規分布の裾の確率評価と乱数生成,日本計算機統計学会,第31回シンポジウム,和歌山県立医科大学,2017.11.16-17.

この口頭発表は,正規分布への近似が非常に良いオイラリアン分布を使って,正規分布の裾の乱数を超大量に生成するための理論とその生成アルゴリズムを提示した.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究集会などは実施しなかった.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

土屋 高宏

城西大学