昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−29

専門分類

5

研究課題名

フラストレートしたスピン系の相転移

フリガナ

代表者氏名

オノ イクオ

小野  郎

ローマ字

所属機関

日本女子大学

所属部局

理学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

相転移の模型でフラストレートしたスピン系は基底状態に縮退があり,通常の秩序相と異ったふるまいをする。この系の統計的な性質を解明するため,モンテ・カルロシミュレーションを行う。


フラストレートしたスピン系の相転移は通常の相転移と異なるふるまいをする。フラストレーションにより基底状態又は低い励起状態に高い縮退が生じ,相転移の消失,リエントラント相転移,遂次相転移,KT的相転移が現われることが見出された。またスピン・グラス転移との関連について調べた。具体的にテーマ別に述べる。
1.フラストレーションを制御したイジング・スピン系の相転移スピングラスでは±Jボンドをランダムに配置することによりフラストレーションが生じるが,ここでは±Jの濃度は一定でフラスレーション・クラスターの形や濃度を制御したシミュレーションを行ない,スピングラスとの違いを明らかにした。
2.スピン1のBlume−Emery−Griffith(BEG)模型の相転移。
この模型は交換相互作用の他双2次相互作用1イオン異方性をもっている。S=1のため秩序変数は磁化と4重極モーメントの2つが独立であり,相互作用の意合により,フェロ相,4重極相,反4重極相があり,温度変化によりリエントラント転移,遂次転移が生じることが解析的に予想され,モンテカルロシミュレーションによりその存在が確認された。
3.界面エネルギーによる相転移の研究強磁性体の両端の面を逆向きに磁化させることにより,中間領域に界面が生じる。
界面エネルギーの大きさ,温度変化を調べることにより特に秩序相の熱力学的性質,臨界点での指数を求めることができる。モンテカルロ法で自由エネルギーの精度のよい計算法を見出し,これにより秩序相の特性を解析した。
4.雪の結晶成長のシミュレーション
粒子の凝集による結晶成長のモンテカルロシミュレーションにより再現し,凝集速度,過冷却度等の関数として,針状,板状の結晶の生じる条件を明らかにした。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.Monte Carlo Simulation on a Controlled−Frustration Model of ±J Ising Systems.I.Ono.4 K.Ishikawa
“Cooperative Dynamics in Complex Physical Systems”edited H.Takayama;1989 Springer Verlarg
2.New Type of Phase Transition in an Antifens−magnetic Ising Model on a Stacked Triangular Latilices.K.Mitsubo,Gang Sun,Y.Ueno.同上
3.反強磁性的双2次相互作用をもつスピン1のBEG模型の相転移I,II。小野〓郎,加国克己1988秋,1989春物理学会発表
4.雪の結晶成長のシミュレーション:室井真吾,田口善弘1989春,物理学会発表


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

モンテカルロ・シミュレーションを行うスピン系のスピン数は約1万個位まで,モンテカルロステップは数万ステップが必要となる。これを温度を変え,系のサイズを変え,相互作用パラメータを種々変化させるとM280を用いても数百時間必要になる。
田村助教授は計算機に精通し,研究の推進に特に必要である。また相転移の理論にも理解があるので共同研究の成果をあげることができる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾関 之康

東京工業大学

田口 善弘

中央大学

田村 義保

統計数理研究所

西森 秀稔

東京工業大学

三坪 喜久男

東京工業大学大学院

安村 薫

東京工業大学