平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−104

専門分類

9

研究課題名

質問票を用いた繰り返し自覚症状調査のコホート分析

フリガナ

代表者氏名

オノ マサジ

小野 雅司

ローマ字

所属機関

国立環境研究所

所属部局

環境健康部

職  名

室長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地域人口集団を対象に、地域の大気汚染レベルと呼吸器症状との関連を調べることを目的として、質問票を用いた調査を数年間継続実施してきた。これらの研究では、様々な要因により回答が変動する。本研究では、昨年度の研究の成果を踏まえ、継続調査結果に基づいて、対象集団における呼吸器症状の新規発症率についてコホート分析を行い、大気汚染との関連を明らかにする。


K県下の小学校学童を対象に実施した、呼吸器症状に関する標準質問票(ATS−DLD質問票)を用いた自覚症状の繰り返し調査結果を用い、呼吸器症状の発症に関わる様々な要因について検討し、以下の結果を得た。
1)学童の呼吸器症状発症に関連する要因としては、本人並びに家族のアレルギー素因の寄与が最も強いことが明らかになった。
2)学童のアレルギー素因と家族のアレルギー素因との間には強い関連が認められた。すなわち、両親にアレルギー素因のない学童でのアレルギー素因保有率と比較して、両親にアレルギー素因のある学童のアレルギー素因保有率は20〜40%高率であった。
3)アレルギー素因を持たない児童と比較して、本人あるいは家族にアレルギー素因を有する児童での「呼吸器症状」有症率は、それぞれ6〜12倍、1.5 〜3倍であり、さらに本人、家族両方にアレルギー素因を有する児童では10〜20倍となっており、本人と家族のアレルギー素因は児童の「呼吸器症状」発症に相乗的に働いていることが明らかになった。
4)大気汚染による健康影響指標の一つである「ぜん息様症状」に着目してみると、「ぜん息様症状」発症に先だって様々な「呼吸器症状」が発現していることが明らかになった。「呼吸器症状・なし」の児童からの「ぜん息様症状」発症と比較して、「持続性のせき」群、「持続性のたん」群、「毎日のぜん鳴」群、「ゼロゼロを伴うかぜ」群、からの発症はそれぞれ44%、53%、65%、35%高率であり、これらの「呼吸器症状」が「ぜん息様症状」発症のリスク因子であることが明らかになった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

小野雅司、他:質問票を用いた繰り返し自覚症状調査のコホート分析、日本公衆衛生学会、1993年10月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

大気汚染の健康影響調査において広く用いられている、呼吸器症状に関する標準質問票(ATS−DLD質問票)に関して、同一集団を対象とした数年間にわたる繰り返し調査は数少ない。本研究では、質問票調査に付随する変動要因を除去し、その後コホート分析を行うことにより、大気汚染と呼吸器症状との関連を明らかにするものである。
昨年度の研究により、質問票調査における回答変動については基礎的検討を終えており、今後国立環境研究所並びに東京大学(研究担当者1、3、4)の共同研究により収集された調査データに基づいて、貴研究所との共同研究により、前述した質問票繰り返し調査による呼吸器症状の新規発症率に関してコホート分析を行い、大気汚染と呼吸器症状発症との関連を明らかにする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

高木 廣文

統計数理研究所

中井 里史

横浜国立大学

新田 裕史

国立環境研究所