平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2029

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

日米中三国比較にみるいじめと家族の絆問題

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

Ueki Takeshi

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的
 日本では、いじめが高じると自殺者が出る。マスコミが中学生の自殺を報じると、連鎖反応的に次々と自殺者が出現する。風聞によれば、いじめはどこの国にでもあると聞く。でも、自殺者が出るとは聞かない。なぜ、日本では自殺者が出るほどのいじめがあるのか。他の国のいじめと、日本のいじめと、同じなのか、相違があるのか。テレビの番組で、アメリカやイギリスのいじめを見たが、日本のいじめと質的にどう違うのか、等を考えた。
 そこで今回の第2次調査では、日本、米国、中国の3ヵ国を取り上げ、いじめの実態調査を行うことにした。米国のいじめに関しては、1次調査からだいたいの予想はつくのだが、中国のいじめに関して驚く情報を得た。ある中国人が言うには、いじめは中国に無いそうである。驚いたわれわれは、すぐ他の中国人研究者に聞くと、ある、ないという返答ではなく、「いじめが無いのは、先生方の権威が強すぎて、いじめが起こらないのだろう」という返事であった。われわれは、更に驚いて、中国の小学校や中学校ではいじめが無いのだ、という確信を持つに到った。そして、3年前から3ヵ国の第2次調査の準備に取り掛かった。
 今回は3ヵ国のいじめの実態調査であり、被験者は3か国それぞれの大学生である。小・中・高校時代に、いじめられた経験があるか、いじめをした経験があるか、どんないじめをされたか、どんないじめをしたか、なぜいじめられたか、なぜいじめをしたか。その後、相手と自分の人間関係はどうなったか、自分の精神状態はどうなったか等を、大学生に質問した。
 家族の絆問題では、第1次調査から判明した米国の家族の絆の方が、日本の家族の絆より強いという結果が出たが、これが文化の特質に起因する「たてまえ」を強く前面に押す文化と、強く押さない文化との相違から出た結果なのかどうか、という疑問が沸き、それならば、「ほんね」を推定できる「行動」を調べてみようということで、質問項目を追加した。

成果
 アンケート回収が未完であるゆえに、成果も未完である。日本の5大学からの回収は済み、データベース化は終了している。中国の6大学からの回収は済み、データベース化は終了した。問題はアメリカの大学で、4大学のうち、ひとつの大学からの回収は済み、データベース他も作成したが、あと3大学が残っている。そのうちひとつの大学は、共同研究者がこちらからのメールに返答してくれず、回収は不可と判断している。残りのふたつは、共同研究者が配布・回収をやると返答してくれているので、時々メールを送り、要請を続けているところである。
 そこで、昨年の10月に中国の寧波大学へ行き、協力してくれている張教授に会い、主としていじめ問題に関して、大学生・院生を面接した。私立中学校へ行き、教員と生徒たちを面接した。これは、アンケート調査をやる場合は、必ず面接調査も並行するという、私自身の基本的方針から実行したわけである。
 中国から回収したアンケート用紙のデータベース化は完了したが、その分析はまだである。しかし、データベース作成中にも気づいたし、また、上記の面接調査でも気づいたが、中国の小・中・高校にも、いじめはある。やはり、あったか、というのが私の現在の理解である。無いと聞いていたので、かなり失望したのだが、しかし、量的・質的相違は明白に出そうな感じを受けたので、やはり文化相違は存在しており、コントラストの違いは打ち出せると考えている。
 家族の絆に関しては、まだまだ明確に言える段階ではない。ウェート付けの問題も残っており、結果が見える前に、ウェートを決定しなければならないと考えている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

出版物
植木武・山森芳郎・石橋義永他
 2008 「共立女子大学・コーネル大学共同研究プロジェクト 日米国際比較にみる家族の絆」共立女子大学総合文化研究所報告第14号. p. 12.
 2009 「共立女子大学・コーネル大学共同研究プロジェクト 日米国際比較にみる家族の絆」共立女子大学総合文化研究所報告第15号. pp. 29, 30.

植木武・吉野諒三
 2009 「日米学生比較」統計数理研究所共同利用実施報告書平成20年度. pp. 107-109.
 
植木武・山森芳郎・石橋義永・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson
 2009 「家族の絆といじめ問題?日米比較調査」第82回日本社会学会大会報告要旨集. p. 122.

植木武・山森芳郎・石橋義永他
 2010 「日米国際比較にみる家族の絆?大学生からみた家族への思い」共立女子大学総合文化研究所報告第16号. pp. 33,34.

植木武・山森芳郎・石橋義永・吉野諒三・R. Edmondson・E. Wethington・Q. Wang・小西將文
 2010 『シンポジウム 日米国際比較による家族の絆といじめ問題』日文・英文両語. 全68頁. 共立女子大学総合文化研究所.

植木武・吉野諒三
 2010 「日米学生比較: 家族の絆」統計数理研究所共同利用実施報告書平成21年度. pp. 129-131.

植木武・山森芳郎・石橋義永・吉野諒三・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson.
 2011 「日米国際比較にみる家族の絆?大学生からみた家族への思い」共立女子大学総合文化研究所報告書17号.27-29頁.

植木武・山森芳郎・石橋義永・吉野諒三・E. Wethington・Q. Wang・R. Edmondson.
 2011 「日米国際比較にみる家族への絆?大学生から見た家族の思い」共立女子大学総合文化研究所紀要第17号.101-140頁.

植木武
 2011 「日米国際比較にみるいじめの問題」統計数理研究所共同利用実施報告書平成22年度.pp. 133,134.

植木武
 2012 「日米中国際比較にみるいじめ問題」統計数理研究所共同利用実施報告書平成23年度.143-147頁.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

2007/4/28〜5/1
第1次調査開始にあたり打ち合わせ。米国コーネル大学ヒューマンエコロジー学部
 副学長 F. M. Firebough, 学部長 A. D. Mathios, Prof. E. Wethington,
 Assoc. Prof. Q. wang, 植木武
2007/5/2
第1次調査開始にあたり打ち合わせ。米国ハワイ州立大学・ホノルルコミュニティーカレッジ
 Assoc. Prof. R. Edmondson, 植木武
2008/9/11~13
第1次調査アンケート用紙の作成。米国コーネル大学ヒューマンエコロジー学部
 Prof. E. Wethington, Assoc. Prof. Q. Wang, 植木武
2008/9/14
第1次調査アンケート用紙の作成。米国ウェブスター大学(セントルイス市・ミズーリー州)
 Prof. R. Tamashiro, 植木武
2008/9/16
第1次調査アンケート用紙の作成。米国ネブラスカ大学(リンカーン市・ネブラスカ州)
 Prof. S. Swearer, Assoc. Prof. J. Torquati, 植木武
2009/7/24
「シンポジウム 日米国際比較による家族の絆といじめ問題」共立女子大学(東京)
 植木武, 山森芳郎, 石橋義永,  Assoc. Prof. R. Edmondson, 小西將文
2010/○/○
第2次調査開始にあたり打ち合わせ。共立女子大学(東京)
 張正軍(寧波大学), 植木武
2010/9/7
第2次調査開始にあたり打ち合わせ。米国ハワイ州立大学・ホノルルコミュニティーカレッジ
 Assoc. Prof. R. Edmondson, Prof. J. Higa, Assis. Prof. F. Takagi,
 Assist. Prof. J. Allen, 植木武
2011/10/13
第2次調査開始にあたりアンケート用紙の作成。米国ハワイ州立大学・ホノルルコミュニティーカレッジ
 Assoc. Prof. R. Edmondson,植木武
2011/10/14~16
第2次調査開始にあたりアンケート用紙の作成。米国ネブラスカ大学(リンカーン市・ネブラスカ州)
 Assoc. Prof. J. Torquati, 植木武
2012/10/18~22
中国アンケートの件で分析する前に話合い。中国の寧波大学(浙江省寧波市)
 張正軍教授,植木武

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

吉野 諒三

統計数理研究所