平成172005)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

17−共研−2044

専門分類

7

研究課題名

水産資源に対する観察データ解析のための統計推測

フリガナ

代表者氏名

ショウノ ヒロシ

庄野 宏

ローマ字

Shono Hiroshi

所属機関

水産総合研究センター 遠洋水産研究所

所属部局

浮魚資源部

職  名

研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

水産資源の利用と管理を適切に行うには、資源管理の単位となる系統群の判別と分布状況を解明し、系統群の死亡率、加入率の量的変化や、種間の相互関係、さらには環境の影響を把握していかなければならない。一般に、我々観測者は水産資源の生息域を直接観測できない場合が多く、資源解析のために利用される調査データおよび漁業データは、観測値のバイアス、ランダムサンプリングからのズレ、データを取得する状況の不均一性に起因する超過変動など、解析を困難にする要因を多く抱える傾向にある。したがって、統計的推測を行う上で土台となるデータとモデルの不確実性は大きく、そのため推測も複雑で困難となることが多い。

 そのような水産資源を対象とした解析のアプローチとして、最尤法やベイズ的手法をはじめ、最近ではセミパラメトリックモデル、推定方程式、経験ベイズ法など多くの手法が利用されはじめている。また、情報量規準をはじめとするモデル選択手法や、その不確実性を考慮した解析も活発に議論されている。

 そこで本研究では、水産資源に対する観察データの性質を考慮した推測方法に関して改めて議論するとともに、適切な統計的手法の選択や新たな推測方法の提案について検討を行った。今年度の共同研究で取り扱った具体的なテーマとして、「オペレーティングモデルを用いたスルメイカの資源管理」、「サメ類の年齢査定における年輪周期性推定に関する統計モデル」、「クロミンククジラ資源量の調査方式に伴うバイアスの補正」、「遺伝標識の継時サンプリングに基づく混合率と遺伝的浮動の同時推定」について議論を深めた。

これまで水産資源解析では注目されることの少なかった「メタアナリシス」について理解を深めるとともに、CPUE(catch per unit effort:単位努力当たり漁獲量)解析への適用可能性について議論した。また、混獲データなどゼロ・データの割合が多い場合に有効であると考えられる「zero-inflated model」、「Tweedie distribution」などの統計モデルについても、漁業データへの適用例について研究会で紹介するとともに、改良の方向性などについて議論した。

今後は水産資源解析における実験の計画の精密化、ベイズ的方法論の積極的な適用、そして既存のモデルに縛られないモデルの考察のためにパラメトリックとノンパラメトリックとの融合を積極的に行う必要があると考える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

H、Shono. Is model selection using Akaike's information criterion appropriate for CPUE standardization in large samples? Fisheries Science、71(5). 978-986, 2005
庄野 宏. ニューラルネットワークによるCPUE解析 -予測と要因分析の試み- 平成17年度水産学会講演要旨(東京)p.190, 2005
Copas, J. and S, Eguchi. Local model uncertainty and incomplete data bias (with discussion). J. Royal Statistical Society B 67. 459-512, 2005
Nishii, R. and S, Eguchi. Supervised image classification by contextual AdaBoost based on posteriors in neighborhoods. IEEE Tran. on Geoscience and Remote Sensing, 43, 2547-2554. 2005
Kawakita, M. M.Minami, S. Eguchi and C. E. Lennert-Cody. An introduction to the predictive technique AdaBoost with a comparison to generalized additive models. Fisheries Research 76, 328-343, 2005
南 美穂. Zero-inflated モデルによる混獲データ解析. 2005年度統計関連学会連合大会講演報告集 p.340, 2005
南 美穂子. 混獲されたサメの数の解析. 東京理科大学 科学フォーラム 東京理科大学出版会 2月号, 18-23, 2005
  袴田高志, 松岡耕二, 西脇茂利. 調査対象生物の採集を伴うライントランセクト法による資源量推定法。平成17年度水産学会講演要旨(東京)p.187, 2005
Okamura, H. Kitakado, T. and Mori, M. An improved method for line transect sampling in Antarctic minke whale surveys. The Journal of Cetacean Research and Management 7(2): 97-106. 2005
清田雅史・岡村 寛・米崎史郎・平松一彦. 資源選択性の統計解析 − II. 各種解析法の紹介.哺乳類科学 45, 1-24, 2005
岡村 寛. 生態系モデルによる多魚種管理と西部北太平洋への適用例. 水産学シリーズ147 青木一郎・二平章・谷津明彦・山川卓編「レジームシフトと水産資源管理」,恒星社厚生閣,72-86, 2005.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本研究は研究代表者を含む研究参加者による意見交換・討論・セミナーを通して行った.

第1回 平成17年11月4日 統計数理研究所 研修室,参加人数8名
「Tweedie modelのCPUE解析への応用」、「KyPlotによるデータの解析と視覚化」、「オペレーティングモデルを用いたスルメイカの資源管理」、「混獲データに対するzero-inflated negative binomial model with smoothing」

第2回 平成18年2月20日 統計数理研究所 会議室,参加人数9名(メンバー外1名含む)
「サメ類の年齢査定における年輪周期性推定に関する統計モデル」、「クロミンククジラ資源量の調査方式に伴うバイアスの補正」、「遺伝標識の継時サンプリングに基づく混合率と遺伝的浮動の同時推定」、「メタアナリシスの紹介とCPUE解析の適用への検討」

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

江口 真透

統計数理研究所

岡村 寛

水産総合研究センター 遠洋水産研究所

北門 利英

東京海洋大学

袴田 高志

(財)日本鯨類研究所

平松 一彦

東京大学

南 美穂子

統計数理研究所

吉岡 耕一

東京医科歯科大学