平成252013)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

25−共研−2

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

柔軟な時系列モデリングのための数値的方法

フリガナ

代表者氏名

キタガワ ゲンシロウ

北川 源四郎

ローマ字

Kitagawa Genshiro

所属機関

情報・システム研究機構

所属部局

新領域融合研究センター

職  名

新領域融合研究センター長(情報・システム研究機構 機構長)

 

 

研究目的と成果の概要

○研究目的
時系列の様々な構造変化に柔軟かつ自動的に対応できるような新しい時系列モデリングの方法開発を試みる.申請時点で計画していた方法は,多数の線形ガウス自己組成型状態空間モデルをagentとするmulti-agentモデルを構成し,その重み自体を適応的に調整するものである.ただし,適応能力と多様性を如何に両立させるか,どの様な基本モデルを用いるか,また如何に効率的な計算を実現できるかが課題であり,これらに関して有用な知見を得ることを研究の目標とする.
○成果の概要
当初,予定した方法とは異なる方向で研究を行った.Laguerre直交関数族を逐次的に生成するための状態空間表現が見つかったので,それを状態空間モデルに取り込むことによって,複雑な時系列をランダムな入力に関する応答を含む様々な成分に分解する方法の開発を行った.状態空間モデルを利用できることにより,未知の係数を適応的かつ効率的に計算できるようになった.
具体的な応用としては,地下水位データおよび体積ひずみ計データからの降水の影響除去を行った.これらのデータ解析においては,目的とする地震の影響の正確な検出のためには,傾向的変化(トレンド)および気圧,地球潮汐,降水等の地震以外の要因による変動を除去する必要があるが,降水の影響は長期にわたることが多く,通常の応答関数モデルでは表現できない.従来,降水効果は,固有根に制約を置いたARXモデルで表現して実用的な結果を得ていたが,いくつかの問題点も見出されていた.今回,開発したLaguerre関数の状態空間モデルを利用する方法によりこれらの問題のいくつかを解決できることが,実データへの適用によって確認できた.今後,引き続き,より多くのデータへの適用によって検証を行う予定である.