平成202008)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

20−共研−2

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

文章のジャンル判別に寄与する指標としての複合動詞の研究

フリガナ

代表者氏名

ムラタ ミノリ

村田 年

ローマ字

MURATA Minori

所属機関

慶應義塾大学

所属部局

日本語・日本文化教育センター

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

本研究の目的は、文章のジャンル判別に有効な指標としての文型ならびに語句が存在することを実証的に明らかにし、その成果を専門日本語教育における論述文の体系的かつ効率的な教育方法に結びつけることである。専門分野に進む外国人学習者がこのような表現形式を学習段階の早い時期から学習することにより、論文の読解・作成能力を短期間に養成することが可能になると考えられる。
本年度は、従来用いてきた文章コーパスの再整備版395編(7ジャンル:工学論文、物理学論文、文学論文、経済学論文、経済学入門書、文学作品、新聞社説)を対象資料とした。また昨年度から進めていた指標(複合動詞の後項動詞となる41の動詞項目)の、対象資料における使用回数調査を終えた。この調査終了後には多変量解析を用いて各ジャンルの文章に特徴的な複合動詞群を抽出し、複合動詞の使用傾向の差異が文章のジャンルの判別に寄与することを実証的に明らかにする予定である。この調査結果を用いて各後項動詞の一文当たりの使用頻度を求め、ステップワイズ法による判別分析を行った結果、論理が明示的だと考えられる論述文ジャンルと、それ以外の文学作品ジャンル、新聞社説ジャンルが判別率67.1%で分離されることがわかった。また、判別に寄与する後項動詞は15項目(「だす」「こむ」「かける」「きる」「あがる」「まくる」「なおす」「いる」「たつ」「あげる」「いれる」「おわる」「つくす」「つづける」)であった。論述文ジャンルの中では文学論が特に複合動詞の使用が多くその種類も多様であった。限られた資料の範囲内ではあるが、複合動詞の後項動詞が文章のジャンル判別の指標として寄与する可能性が実証的に明らかになった。