昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−67

専門分類

7

研究課題名

腎移植後の大腿骨頭壊死:疫学的及び統計学的研究

フリガナ

代表者氏名

コマザワ ツトム

駒澤 勉

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

名誉教授

職  名

名誉教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

9 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

腎移植例の晩期合併症である大腿骨頭壊死が近年問題となっているが,壊死発生の機序,機構は不明な点が多い。そこで,骨頭壊死発生例と非発生例との疫学調査及び統計データ解析を行い,壊死発生の危険因子を究明,解明し,最終的には壊死発生を予防することを目的とする。


腎移植後の大腿骨頭壊死発生の機序,機構は不明な点が多く,種々の危険因子が想定されている。この解明の一助とするため,我々は多変量解析を行った。今回はretrospective studyとして1985年以前の腎移植例の各種変量の主成分分析を行い,予見的調査の分析結果とあわせて検討を行った。
対象は,1968年11月より1984年12月末まで約16年間に行われた腎移植例191例である。そのなかで主成分分析で検討した症例は各種免疫抑制剤,血圧,血算,生化学など20変量に欠損値のない骨頭壊死を生じた23例と,移植後3年以上経過して骨頭壊死を生じていない36例の計59例であった。
データ解析の結果,次のような考察を得た。主成分分析によると一般臨床検査データで個体の総合的特性を表現できない利点がある。今回のretrospectiveの症例の主成分分析と現在実施しているprospective studyでの主成分分析の結果を比較すると,retrospectiveの症例ではγ−GTP,Al−P,LAPの因子負荷量が大きいのに対し,prospective studyを行っている1985年以降の症例では血圧因子の因子負荷量が大きかった。このことはretrospectiveの症例群とprospectiveの症例群とでは検査データの構造つまり生体反応が異なっていることを示した。今回,分析対象とした1985年以前に腎移植を受けたretrospectiveの14症例はシクロスポリン−Aが投与されていないのに対して,最近の予見的症例群11例では同剤が全例使用されていた。免疫抑制剤の種類と使用法が大きく異なっていたため,術後の生体の全体としての動的反応に違ったパターンが生じたものと考えられる。
今後の分析に当たっては,術後の薬剤治療が同質性の予見的症例のみについて症例の蓄積を行い,MRIでの骨頭変化を調べた骨頭評価項目も追加した諸データによって再度のデータ解析を行いたい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

永田善郎ほか,腎移植後の大腿骨頭壊死(予見的調査例と多変量解析),Hip Joint,14,189〜192,1988
駒澤勉,二ノ宮節夫ほか,腎移植後の大腿骨頭壊死(検査データの多変量解析),厚生省特定疾患昭和63年度研究報告書,平成元年3月


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

東京大学医科学研究所人工臓器移植部にて今日までに約200例の腎移植が行われた。これらの症例のうち予後調査を施行出来た症例は89例であり,このうち壊死発生を23例(26%)に認めた。又,1985年4月以降の症例については,予見的調査を開始している。この予見的調査例について,多変量解析を行った所,腎移植術後経過に数種の型がある事が判明した。そこで,壊死発生例と非発生例について,この多変量解析の結果を照合させ,解析することで壊死例の特徴を抽出し検討する。その為に統計数理研究所でのデータ解析,統計処理についての共同研究を必要とする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

秋山 暢夫

東京大学

小久保 宇

東京大学

杉本 久之

東京大学

高取 吉雄

東京大学

永田 善郎

東京大学

中村 茂

東京大学

中山 利孝

東京大学

二ノ宮 節夫

東京大学