平成172005)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

17−共研−2028

専門分類

4

研究課題名

個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用

フリガナ

代表者氏名

サイ シドウ

佐井 至道

ローマ字

SAI Shido

所属機関

岡山商科大学

所属部局

経済学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

11 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

標本調査によって得られた個票データを公開する際のリスク評価としては,個票データから計算され
る標本寸法指標から母集団寸法指標を推定することが現在もなお主流である。その理論的な研究を深め
るとともに,主に国内の官庁統計の個票データに対して適用し,その有効性を示すことが本研究の最大
の目的である。母集団寸法指標の推定に用いる確率分割モデルについて,昨年度から引き続き精力的な
研究が行われ,複合ポアソン分布のモデリングが完成するとともに,Gibbs分割などについて新たな研
究が進められた。
 これまで提案されている母集団寸法指標の制約付きノンパラメトリック最尤推定では,尤度関数の最
大値を探索的な方法で見つけ出す必要があり,大きな母集団に対する推定では,計算時間上,推定が困
難であった。昨年度の本研究で,母集団寸法指標を離散型から連続型へ見直すとともに,制約条件をペ
ナルティー関数として尤度関数に取り込むアイディアが提案されたが,今年度の研究においてその実現
が図られ,106程度の大きさの母集団について計算時間を大幅に短縮することができた。官庁統計への
適用を考えると108程度の大きさの母集団に対する適用が必要となるが,この点については来年度以降,
実現を図りたいと考えている。また今年度新たに提案されたベイズアプローチの推定法についても,継
続的に研究を行っている。
 個票データの秘匿やリスク評価の手法と比較して,多元分割表のような表形式データの公開に関して
は,国外ではτ-ARGUSなどの秘匿用パッケージソフトが開発されているものの,国内での研究は立ち
後れていた。今年度は本研究内外において研究が進められたが,いずれの研究でも工業統計のような国
内の官庁統計データへの適用における問題点も指摘された。その点については来年度以降も本研究にお
いて取り組んでいきたいと考えている。また,これとは別に,個票データを多次元分割表と捉えて,そ
のリスク評価を行う分解可能モデルについても研究が進められた。
 今年度も統計数理研究所内外において数回の研究会を開催した。2005年11月12日に研究所内で開
催された研究会では,海外における表形式データの公開方法,そのリスク評価法と秘匿方法についての
報告がなされるとともに,研究者個々の研究内容について更なる改善を図るための多くのアイディアが
提供された。また,科学研究費補助金の研究グループと共催で2006年1月13日,14日に金沢大学サ
テライトプラザにおいて開催された「個票開示問題および関連領域に関する研究集会」では,特に個票
データを分析のために利用している経済統計の研究者との意見交換が行われ,個票データ公開のリスク
評価とともに,秘匿された個票データの利用価値の維持について考える良い機会になった。
 なお今年度の特別研究費で個票データの分析に関する最新の書籍を複数冊購入したが,現在,研究者
個々が新たな知見を収集しており,来年度の本研究グループの研究会において紹介するとともに,本研
究への取り込みを図る予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

今年度発表された論文,書籍は以下の通りである。
1.佐井至道,部分母集団の情報を用いた母集団寸法指標の推定とノンパラメトリック推定の改良,岡山商大
論叢,第40巻,第3号,33-53。
2.Hoshino,N.,Engen's extended negative binomial model revisited,Annals of the Institute of
Statistical Mathematics,Vol.57,No.2,369-387.
3.稲葉由之,社会構造の変化と統計分類?産業分類,職業分類について?,Economy Society Policy,
No.395,32-35。
4.和合肇,大森裕浩,計量経済分析へのベイズ統計学の応用(和合肇編著,ベイズ計量経済分析:マルコフ
連鎖モンテカルロ法とその応用,第1章),東洋経済新報社,1-37。
5.和合肇,大森裕浩,マルコフ連鎖モンテカルロ法とその応用(和合肇編著,ベイズ計量経済分析:マルコ
フ連鎖モンテカルロ法とその応用,第2章),東洋経済新報社,38-99。
6.和合肇,空間的相互作用を考慮した地域別景気の動向,フィナンシャル・レビュー,第78号,71-84。
7.加納悟,計量モデリングと意識調査?ヒューマン・フィルターリング?,経済研究,第56巻,第2号,
123-131。
他7編
 また今年度,学会などにおける報告は次の通りである。
1.佐井至道,母集団寸法指標の制約付きノンパラメトリック推定におけるいくつかの改善について,
統計関連学会連合大会。
2.竹村彰通,遠藤祐司,多元分割表のグラフィカルモデルの推定と個票開示問題への応用,統計関連
学会連合大会。
3.星野伸明,疑似多項分布による個票開示リスク評価,統計関連学会連合大会。
4.稲葉由之,有業者方式と労働力方式の調査結果に基づく就業構造の把握に関する考察,統計関連学会連
合大会。
他8件

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ:個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用
開催期日:2005年11月12日(土)10:00〜15:00
開催場所:統計数理研究所研修室
参加者数:約10名
テーマ:個票開示問題および関連領域に関する研究集会(主催は科学研究費補助金研究グループ)
開催期日:2006年1月13日(金)10:00〜14日(土)16:40
開催場所:金沢大学サテライトプラザ講義室
参加者数:約30名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

稲葉 由之

総務省

打浪 清一

九州工業大学

大森 裕浩

東京大学

加納 悟

一橋大学

瀧 敦弘

広島大学

竹村 彰通

東京大学

田村 義保

統計数理研究所

福重 元嗣

大阪大学

星野 伸明

金沢大学

和合 肇

名古屋大学