平成111999)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

11−共研−2048

専門分類

7

研究課題名

人体の各領域における皮膚表面凹凸の法則性の検討

フリガナ

代表者氏名

イマヤマ シュウヘイ

今山 修平

ローマ字

Imayama Shuhei

所属機関

九州大学

所属部局

医学部

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

目的:おおまかに肌はスベスベであるが、詳細に観察すると表面には細かい溝で仕切られた模様がある。
たとえば腹部では3方向に走る溝により区切られた三角ないし六角形の模様がみられ、腕や下肢では2方
向の溝に区切られて長方形の模様があり、手や足では並行して走る溝により指紋や足紋が形成されてい
る。これらは生下時から存在するが、前2者が老化や外的負荷により容易に変化するのに対して後者は不
変であるという違いがある。このような形の相違と経過の差異にも拘らず、皮膚表面に存在する模様の法
則性と生物学的意義は充分に説明されていない。そこで人体の各領域における皮膚表面形態を検討して
その法則性を見いだすことが目的である。

成果:本年度の研究では昨年までの検討に加えて知覚神経の分布についての検討(下記8-11)を加えた。
1)皮膚表面の模様の老化に伴う変化(下記1-7,12)
 表皮は外界との最前線であるから表面の細胞脱落は外的に決定される。表皮細胞は基底細胞の分裂によ
って供給されるから、外的に脱落量が変動するにも拘らず表皮の形や厚さが一定に保たれているのは、脱
落側が基底側の供給を制御しているからであろう。では表皮はどのような制御に基づいて、スベスベな表
面と凸凹の基底面という(一見奇妙な)動的平衡を可能にしているであろうか。
 体表面では表面張力により、角層細胞は四方八方へと水平に伸張されて6角形(正確には14面体)のタ
イル状になっている。大気に曝されている表面では、乾燥により収縮するかと思えば逆に発汗や入浴時に
は水を吸って膨潤するなど体積の変化が著しく、収縮/膨張を繰り返すうちにめくれるようにして脱落す
る。一定数の角層から1個が脱落すると、その部分だけは張力を分担する細胞が減り、減った分だけ弱く
なって拡大する。全ての角化細胞はデスモゾームで結びつけられているので、周囲に拡大する水平の力
は、すぐ下の細胞を引き上げる垂直方向の力となる。こうして自律的に立体構築が維持(本多、種村:ラ
ンダム配列モデル)されると考えられる。角層から顆粒層までが規則的な構築であるのに、それ以下の細
胞には殆ど規則性が認められないのは角層がほとんど全ての張力を負担していて、それ以下の細胞には大
した力は働いていないという力学的理由によるものである。こうして表皮の力学関係が明らかになり、表
面の細かい模様が、場に加わる力と角層の柔軟性との要因で決定されることが判明した。

2)皮膚の知覚神経の分布状態についての検討(下記8-11)
 健常対照者では、?表皮内への侵入点の分布が均等であり、?侵入後の表皮内での線維長は一定の範囲
内に収まった。また、?枝分れはほとんど観察されなかった。これに対してアトピー性皮膚炎患者では、
?表皮内への侵入が著しく不均等であり、?個々の線維長にも著しい不揃いがみられた。また、?長い線
維では表皮内での枝分れが観察された。
 健常者における表皮内の神経線維分布の均一性から、表皮への神経線維分布には自律的な法則があるこ
とが推測された。たしかに外的刺激をくまなく感受することは生命活動に必須であるから、皮膚の構築の
違いに関わらず、神経終末は皮膚表面では均等に分布する必要があると思われる。アトピー性皮膚炎の表
皮内神経ではこれらの均一性が失われていたことから局所性の要因が強く示唆された。すなわち患者皮膚
では掻破により常に表皮が損傷を受けており、常に一種の修復機転にあると考えられる。この修復機転に
よる局所性の増殖因子の分泌などが局所性の神経線維の増殖を促進している可能性が強く示唆された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文:
1)Imayama S:Aging represents a continuous rearrangement of collagen and elastic fibers that begins
at birth.Nagoya Med J 43: 149-158,2000
2)Imayama S:Aging Changes of the Blood Vessels in the Skin.Nagoya Med J 43: 113-119,2000
3)今山修平:皮膚老化の発症機序.形成外科 42: 793-9,1999
4)今山修平:若者の肌・老人の肌.形の科学事典,形の科学会編集,小川 泰,高木隆司,朝倉出版(印
刷中)
5)今山修平:総論:真皮結合組織の構造と機能,各論:しわとたるみの発生と対策.日本美容皮膚科学会
監修,漆畑 修,本田光芳,宮地良樹編集,美容皮膚科プラクティス.東京:南山堂,1999:
80-83.1999: 29-39,388-399
学会発表
6)今山修平:皮膚はどうして「シワ」になり「弛む」のか 第50回日本毛髪科学協会全国セミナー:教育
講演 6/19/2000
7)今山修平:Chemical peeling?作用機序の理解とその実際? 第99回日本皮膚科学会総会:シンポジ
ウム 5/28/2000
8)種村正美、今山修平、本多久夫:ヒト皮膚における表皮内神経分布の観察と解析 第47回形の科学シン
ポジウム 3/17/2000
9)今山修平:アトピー性皮膚炎患者の表皮内神経の分布と形態 第63回日本皮膚科学会東京支部総会:シ
ンポジウム 2/20/2000
10)今山修平、本多久夫、種村正美:母斑とモザイクをめぐる最近の話題:アザは皮膚の形態形成の乱れ
に違いない 第63回日本皮膚科学会東部支部総会:シンポジウム 9/26/1999
11)今山修平:アトピー性皮膚炎患者の神経 第24回日本研究皮膚科学会:シンポジウム 7/30/1999
12)今山修平:形態形成の数理モデル解析 第72回日本組織培養学会:特別講演 5/21/1999

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所

本多 久夫

兵庫大学