平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−73

専門分類

7

研究課題名

魚類の系統分類

フリガナ

代表者氏名

ハセガワ マサミ

長谷川 政美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

予測制御研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

魚類の中で陸上脊椎動物(四足動物)に最も近縁なものはどれかを明らかにするために、核、およびミトコンドリアにコードされている各種蛋白質のアミノ酸配列データに基づき分子系統学的検討を行う。また、前年度までの共同研究により、魚類の進化速度が鳥類や哺乳類のそれに比べて遅いことが示唆されているため、この点に関しても引き続き詳細な検討を加える。


硬骨魚類のうち総鰭類(シーラカンス)と肺魚類とは、そのほかのもの(条鰭類)よりも両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類などの陸上脊椎動物(四足動物)に近縁であると考えられている。つまり総鰭類や肺魚類のなかまから四足動物が進化してきたと考えられているのである。
ところが、総鰭類と肺魚類のどちらがより四足動物に近縁かとなると、研究者によってさまざまな意見の違いがある。形態学者の多くは、総鰭類近縁説をとるが、これまでの分子系統学的な研究からは、肺魚近縁説が多少有利であった。
われわれは、昨年度に引き続き、ミトコンドリアDNAの遺伝子解析を実施するとともに、アミノ酸配列のレベルで最尤法による分子系統樹の推定を行なった。その結果、これまであまり注目されてこなかった第3 の可能性、つまり肺魚類と総鰭類が近縁であるとの可能性がかなりあるという結論に達した。
総鰭類近縁説は分子系統学のデータ解析結果からは現在のところ考えにくい仮説であるが、今後、肺魚近縁説と総鰭類/肺魚近縁説のいずれかに軍配を挙げるために、より多くのデータを蓄積していく必要がある。
一方、これらのデータを含めミトコンドリアDNAにコードされている多くの蛋白質のアミノ酸配列データについて、いろいろなアミノ酸置換モデルを比較検討した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Yokobori, S., Hasegawa, M., Ueda, T., Okada, N., Nishidawa, K.,and Watanabe,K., Relationship among coelacanths, lungfishes, and tetrapods: a phylogenetic analysis based on mitochondrial cytochrome oxidase I gene sequences, Journal of Molecular Evolution, Vol.38, 1994


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

前年度までの共同研究の結果、シーラカンスと肺魚のミトコンドリアDNAの部分配列が蓄積されてきているので、これらのデータおよび他の魚類、四足動物の既報のデータを用いて系統樹の最尤推定を行い、魚類のなかで四足動物に最も近縁なものはどれかを検討する。さらに、データの量が未だ不十分であることが予想されるので、シーラカンスと肺魚のミトコンドリア全ゲノムの配列決定のための遺伝子解析を継続する。
一方、魚類の進化速度に関しては、核にコードされている蛋白質のアミノ酸配列データをもとにミトコンドリアとの相違点を検討する。系統樹の最尤推定に関する大規模計算を行うため、統計数理研究所での共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

足立 淳

オックスフォード大学

岡田 典弘

東京工業大学

岸野 洋久

東京大学

小島 茂明

東京大学

Cao Ying

統計数理研究所

横堀 伸一

東京工業大学大学院