平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2026

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

第二言語習得における母語のイベント・スキーマの影響の分析:統計分析を用いて

フリガナ

代表者氏名

チョウ カナコ

長 加奈子

ローマ字

Cho Kanako

所属機関

北九州市立大学

所属部局

基盤教育センターひびきの分室

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

113千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究課題は,1980年代以降,言語理論の分野において中心的なパラダイムとなった「認知言語学」の概念である「イベント・スキーマ」に焦点を当て,そのイベント・スキーマを定量的に検証すること,および第二言語習得において母語のイベント・スキーマの影響を検証することを目的としている。H25年度は特に,以下の3つの文法事象のイベント・スキーマについて研究を行った。

1.  二重目的語構文とto与格構文の違い
2. 動詞 denyが現れる二重目的語構文
3. 英語受動文のpassivenessについて

その結果,以下のような成果が見られた。
1. 二重目的語構文と to与格構文について,情報構造の違いという観点に着目し,動詞の直後に現れる名詞の定・不定について,大規模コーパスである The British National Corpus を調査した。その結果,情報の定・不定が構文の選択に寄与していることが明らかとなり,川瀬(2004)が主張しているイベント・スキーマを裏付ける結果となった。

2. 二重目的語構文に生じることができる動詞denyが表す事態を明らかにするために,British National Corpusを用いて第二目的語に生じる名詞の頻度と種類を調査した。その結果,二重目的語構文の意味として一般的に仮定されている"cause-to-receive"という定義では説明することができない種類の名詞の頻度が高いことが明らかになった。また,type-token ratioに着目することで,この動詞の二重目的語用法のプロトタイプ的事例と,当該用法の生産性が高い意味クラスが単純には同定できないことを示した。

3. 英語の受動文は、行為者が明示された過去の行為を表す典型的な受動文から、状態動詞を用いた現在の状態を表す受動文まで様々なタイプがあるが、用いられる動詞により受動文らしさがどのように異なるかBNCのデータを用いて分析した。受動文の時制、行為者の出現率を動詞ごとに数値化し、相関分析を行った結果、動詞タイプによる分布の違いがかなり明確に見られた。

以上の内容について,論文をまとめ,共同研究レポートという形で発表した。なお本研究課題は次年度も継続し,第二言語習得への影響,特に日本人英語学習者への影響を検証する予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【論文発表】
長 加奈子「情報構造と構文の選択:二重目的語構文と to与格構文の観点から」,統計数理研究所共同研究リポート315『コーパスを用いたイベントスキーマの分析』,pp. 1-12.

植田正暢「二重目的語構文denyの第二目的語について」,統計数理研究所共同研究リポート315『コーパスを用いたイベントスキーマの分析』,pp. 13-28.

川瀬義清「英語受動文の passiveness と動詞タイプ」,統計数理研究所共同研究リポート315『コーパスを用いたイベントスキーマの分析』,pp. 29-42.

【学会発表等】
長 加奈子「二重目的語構文と to与格構文の概念構造:情報構造の観点から」,言語研究と統計2014,統計数理研究所.

植田正暢「二重目的語構文denyの第二目的語に出現する名詞について」,言語研究と統計2014,統計数理研究所.

川瀬義清「英語受動文の passiveness と動詞タイプ」,言語研究と統計2014,統計数理研究所.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

統計数理研究所言語系共同研究グループ合同発表会「言語研究と統計2014」
日時:2014年3月29日(土)・30日(日)
場所:統計数理研究所
参加者数:70名

統計数理研究所言語系共同研究グループ合同中間発表会
日時:2013年9月9日(月)・10日(火)
場所:西南学院大学(福岡市早良区)
参加者数:23名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

植田 正暢

北九州市立大学

川瀬 義清

西南学院大学

前田 忠彦

統計数理研究所