平成212009)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

21−共研−2033

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用

フリガナ

代表者氏名

サイ シドウ

佐井 至道

ローマ字

Shido SAI

所属機関

岡山商科大学

所属部局

経済学部 経済学科

職  名

教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

10 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 新統計法が2009年4月に完全施行された。改訂の柱の一つは「統計データの利用促進と秘匿措置の実現」であったが,従来の目的外使用を継続した制度を除くと,個票データが二次利用可能になったものが4統計,オーダーメード集計が可能になったものが1統計にとどまっている。その制度と利用の拡大のために必要となる個票データのリスク評価方法の確立と総合的な秘匿法の提案,更にはそれらを基にした官庁統計データの公開方法の提案を,本研究では目的としていた。
 個票データをリスク評価する場合には,推定された母集団寸法指標を用いることが多いが,本年度もパラメトリック推定のための新たな知見が数多く見いだされた。
また,本研究グループによって,2時点以上で得られた標本から作られた複数の個票データや,層化抽出された標本から作られた個票データをリスク評価するために,多重寸法指標の利用が提案されていたが,多重母集団寸法指標のノンパラメトリック推定法についても理論構築が順調に進み,ピットマンモデルを2次元に拡張したモデルについても,実データへの適用の可能性が報告された。昨年度,目的外使用を行った労働力調査の個票データから得られた種々の統計量ついて,時系列データとしての観点から分析がなされた点も成果の一つである。
 研究成果については,2009年9月6日〜9日に同志社大学で行われた統計関連学会連合大会などの学会やシンポジウムにおいて報告を行うとともに,国際シンポジウムや研究集会などでも報告,討論を行った。2009年10月22日,23日には,統計数理研究所・会議室1において,科学研究費補助金グループ(基盤研究 (B)(一般)(研究代表者:佐井至道))との合同研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究」を開催し,本研究グループ以外の研究者や官庁統計の実務者との意見交換も行った。
 このような研究活動の結果,官庁統計の公開に関する基礎理論が更に蓄積されたと考える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 今年度発表された論文,書籍は以下の通りである。(発表決定のものも含む。)

1. 佐井至道,多重母集団寸法指標のノンパラメトリック最尤推定 −2時点の個票データへの適用−,統計数理,第57巻,第2号,印刷中.
2. 稲葉由之,企業グループにおける電子商取引,統計数理,第57巻,第2号,印刷中.
3. Hoshino, N., The quasi-multinomial distribution as a tool for disclosure risk assessment, Journal of Official Statistics, Vol.25, No.2, 269-291.
他6件

また今年度,学会などにおける報告は次の通りである。

1. 佐井至道,労働力調査の個票データのリスク評価法に関する種々の改善,2009年度統計関連学会連合大会.
2. 清智也,青木敏,竹村彰通,多元分割表の階層モデルに対する不変群の導出,2009年度統計関連学会連合大会.
3. 星野伸明,労働力調査個票開示リスクの時間安定性について,2009年度統計関連学会連合大会.
4. 稲葉由之,荒木万寿夫,世帯員データを用いた世帯類型の作成,2009年度統計関連学会連合大会.
5. 渋谷政昭,複合分布モデルとベル多項式,2009年度統計関連学会連合大会.
6. 大和元,Residual fractions of size-biased permutation of discrete prior associated with Gibbs partition,2009年度統計関連学会連合大会.
7. 小林良行,一橋大学を通じた匿名データの利用手続きについて?利用相談から利用実績の報告まで?,2009年度統計関連学会連合大会.
他17件

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ:個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用
 日時:2009年7月11日(土)10:00−17:00
 場所:統計数理研究所・研修室
 参加者数:9名(うち報告者数:5名)

テーマ:官庁統計データの公開における諸問題の研究
日時:2009年10月22日(木)10:00−16:00,23日(金)10:00−16:00
場所:統計数理研究所・会議室1
参加者数:45名(うち報告者数:12名)

※ ともに,科学研究費補助金 基盤研究(B)(一般)(研究代表者:佐井至道)との共同開催

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

稲葉 由之

慶應義塾大学

大森 裕浩

東京大学

渋谷 政昭

慶應義塾大学

瀧 敦弘

広島大学

竹村 彰通

東京大学

田村 義保

統計数理研究所

星野 伸明

金沢大学

大和 元

鹿児島大学

和合 肇

京都産業大学