昭和601985)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

60−共研−10

専門分類

1

研究課題名

確率論における極限定理の研究

フリガナ

代表者氏名

マエジマ マコト

前島 信

ローマ字

所属機関

慶應義塾大学

所属部局

理工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

確率論,統計学の基礎研究として重要な極限定理の研究は,確率論,統計学の他の分野と比べて,我が国においてはあまり活発でない。しかし近年,古典的と思われていた結果ですら,新しい観点からの見直しがはじめられ,全く新しい方向へ向おうとしているのが世界の現状である。我が国でも何人かの研究者がすでにその方向の研究を始めている。この共同研究ではまず最近の動向を総括し,それをもとにして,新しい極限定理の可能性をさぐっていきたい。


前島,笠原は,「古典的な極限定理の点過程論による再定式化とその応用について」,前島,河野は「新しい自己相似過程の構成と関連する極限定理について」,河津,清水は「ランダムにかわる状況下でのランダム・ウォークについて」,佐藤,森,安芸は「その他の関連する諸問題について」,それぞれ分担した。共同分担テーマについては,相互に連絡をとり合っていたが,すべての問題について共同研究員全員で研究,討議するために,昭和61年1月23日,24日の2日間,統計数理研究所で会合を開いた。そこでは,それまでの調査,研究の成果が,各研究員より報告され,引き続き活発な討論が行われた。主な報告は以下の通りである。
1.(笠原)古典的な極限定理を点過程の収束としてとらえることで再定式化し,同じアイディアを自己相似過程に関連する未解決の問題を解くための指針を与えた。2.(前島)確率距離の方法の極限定理への応用について,今後の課題について報告した。3.(河野)極限過程がブラウン運動にならないような“非”中心極限定理が,今迄知られているもの以外にもあり得ることを報告した。4.(河津)ランダムな状況下でのランダム・ウォークに関する最近の内外の研究を紹介,それらの重要性について指摘した。5.(清水)河津が解説した問題について,状況がランダムになると,どのような変化が起こるかについてのコンピュータ・シミュレーションの結果を紹介した。
会合以後もいくつかの問題(たとえば,ランダムな状況下でのランダム・ウォークの極限分布や“非”中心極限定理について,ひき続き活発な連絡が行われた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1.古典的な極限定理を最近発表した点過程の収束の理論を使って再定式化すると,今迄の結果の多くの見通しがよくなるばかりでなく,新しい結果が容易に得られることが,わかりつつある。このアイディアをさらに多くの方面へ応用していく。2.極限定理の結果あらわれる極限過程は自己相似性をもつことが知られているが,新しい自己相似過程の存在,その性質の研究,自己相似パラメータの推定などの統計的問題を研究する。3.環境がランダムにかわる状況の下でのランダム・ウォークはランダム・ウォークの性質を著しくかえることがわかりつつある。この問題はランダムネスの本質を考える上でも重要と思われ,新しいモデルを通して関連する極限定理を研究する。4.我が国では確率論研究者と統計学研究者の交流が少ないが,上記問題の研究にはその協力が必要なことは明らかで,所外の確率論研究者が統計数理研究所と共同研究できることが望ましいと思われる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安芸 重雄

大阪大学

笠原 勇二

お茶の水女子大学

河津 清

山口大学

河野 敬雄

京都大学

佐藤 健一

名古屋大学

清水 良一

統計数理研究所

森 俊夫

横浜市立大学