平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2055

専門分類

9

研究課題名

残留性化学物質データの組織化と発生源解析

フリガナ

代表者氏名

ササキ ユウコ

佐々木 裕子

ローマ字

Sasaki, Yuko

所属機関

東京都環境科学研究所

所属部局

分析研究部

職  名

部長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

340千円

研究参加者数

38 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

(目的)
ダイオキシン類をはじめとする残留性化学物質は,高い毒性と長期にわたる残留蓄積性から,ヒトや環境への有害影響が危惧されている。そこで,国及び地方公共団体は,ダイオキシン類対策特別措置法,PCB廃棄物適正処理推進特別措置法などに基づいた排出量削減対策を実施している。ダイオキシン類汚染は地域により焼却,農薬不純物,塩素漂白,PCB製品などの発生源の寄与が異なり,特に一部地域ではPCB製品の寄与が大きいことが明らかとなってきた。PCBは10種の同族体,209種の異性体からなり,データの収集にはダイオキシン類(異性体:222種)と同様に,分析に高度な技術と多大な時間,膨大なコストが必要とされる。そのため,環境中の挙動や発生源寄与などについて,充分な科学的知見が得られていない。本研究は,国内各地域の大気,水,土壌,底質等の各環境媒体のダイオキシン類やPCBの異性体・同族体プロフィールと,焼却,農薬不純物,塩素漂白,PCB製品など主要な発生源ごとに特有な異性体・同族体プロフィールを収集すると共に,ダイオキシン類,PCB発生源解明のためのChemical Mass Balance (CMB)法の整備を進め,更に,データ解析により推定される発生源寄与率やダイオキシン類等の挙動に基づき適切な発生源対策を構築する。
(成果(経過))
 本年度は,ダイオキシン類やPCBの異性体・同族体分布状況の把握及び統計的手法を用いた発生源解析等を主要課題として研究を実施した。
<ダイオキシン類やPCBの異性体・同族体分布状況の把握>
活性白土製造工場で検出されたダイオキシン類の異性体組成の把握,東京都内環境中のダイオキシン類の魚類への影響及び底質への高濃度塩素添加によるダイオキシン類の組成パターン変化の解析,水田土壌中ダイオキシン類の収支,起源及び消失特性の把握,複数のダイオキシン類分析用GCカラムを用いた各種データの変換手法の構築,ローボリュームエアーサンプラーとミドルボリュームエアーサンプラーを用いた大気中のダイオキシン類及びPCBの採取法の検討比較
<統計的手法を用いた発生源解析等>
ダイオキシン類発生源寄与率推定における発生源の最適化及び関数関係解析によるCMB法と米国環境保護局の標準的方法であるCMB8との比較,千葉県市原港底質,新潟県河川底質及び宮城県石巻市大気を対象とした未確認発生源寄与率推定のためのベイズ的方法の有用性検証,統計的手法を用いた宮城県内環境中のダイオキシン類分布の特徴把握,水質環境基準超過地点における分布の類型化,指標異性体を用いたダイオキシン類汚染源寄与率の概算手法とベイズ型重回帰によるケミカルマスバランス法の比較検討,水生昆虫を用いた河川中ダイオキシン類発生源寄与率の推定,CMB法による北海道内環境試料におけるPCB汚染源解析の実施
以上の結果から,発生源解析手法に関する様々な知見を獲得することができ,柏木の開発した関数関係解析によるCMB法,ベイズ型重回帰によるCMB法及びベイズ的手法による未知発生源寄与率算出手法が期待通りに機能することが確認されると共に,発生源対策に有用な知見が得られた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(論文)
・柏木宣久,吉澤正,茨木剛,加藤謙一,橋本俊次,佐々木裕子 (2006). 環境汚染に対する未確認発生源の寄与率の推定,統計数理, 54, 123-146.
・鈴木貴博,山口晃,茨木剛,大野勝之,村山等,澁谷信雄,橋本俊次,柏木宣久 (2006). 関数関係解析によるケミカルマスバランス法を用いたダイオキシン類の発生源寄与率推定法に関する検討, 環境化学, 16, 437-448.
・佐々木啓行,山本央,阿部圭恵,吉岡秀俊,飯村文成,橋本俊次,柏木宣久,佐々木裕子 (2007). 環境大気中のダイオキシン類の濃度推移とCo-PCBsの汚染原因, 環境化学, 17, 27-35.
(学会発表)
・山本央,阿部圭恵,佐々木裕子,柏木宣久,橋本俊次 (2006.6). 底質の塩素処理によるダイオキシン類の組成パターン(その2), 環境化学討論会
・阿部圭恵,山本央,佐々木啓行,佐々木裕子,柏木宣久,橋本俊次 (2006.6). 東京湾及び都内河川の魚類におけるダイオキシン類, 環境化学討論会
・加藤謙一,菱沼早樹子,中村朋之,鈴木滋,斎藤善則,柏木宣久 (2006.6). 宮城県内におけるダイオキシン類の分布, 環境化学討論会.
・菱沼早樹子,加藤謙一,鈴木滋,斎藤善則 (2006.6). 宮城県内公共用水域(河川,湖沼)におけるダイオキシン類の分布解析;環境基準超過点を中心として, 環境化学討論会.
・茨木剛,山口晃,鈴木貴博,大野勝之,村山等,澁谷信雄,森田正敏 (2006.6). 活性白土製造工場で検出されたダイオキシン類の異性体組成の特徴, 環境化学討論会.
・村瀬秀也,安田裕,橋本俊次,伊藤裕康,柏木宣久 (2006.6). 河川環境中のダイオキシン類(第2報);水生昆虫を用いた河川環境におけるダイオキシン類発生源寄与率の推定, 環境化学討論会.
・清家伸康,大谷卓 (2006.6). 日本の水田土壌中ダイオキシン類の収支(1958年から2000年), 環境化学討論会.
・清家伸康,殷熙洙,大谷卓 (2006.6). 水田土壌中ダイオキシン類の起源と消失特性, 環境化学討論会.
・姉崎克典,山口勝透,大塚英幸,棗庄輔,岩田理樹,橋本俊次 (2006.6). ケミカルマスバランス法を用いた北海道における環境試料中のPCBsの汚染源解析, 環境化学討論会.
・姉崎克典,山口勝透,大塚英幸,野口泉,岩田理樹 (2006.9). 大気中のダイオキシン類及びPCBの採取法の検討−ローボリュームエアーサンプラーとミドルボリュームエアーサンプラーの比較, 大気環境学会年会.
・山口勝透,姉崎克典,大塚英幸,野口泉,岩田理樹 (2006.10). 大気中のダイオキシン類及びPCBの採取法の検討−ローボリュームエアーサンプラーとミドルボリュームエアーサンプラーの比較, 大気環境学会北海道東北支部総会.
・山口晃,鈴木貴博,茨木剛,大野勝之,村山等,福崎紀夫,橋本俊次 (2006.10). 異なるダイオキシン分析カラム間における異性体測定値の推計方法とその検討, 環境保全・公害防止研究発表会.
・村瀬秀也,安田裕,大平武俊 (2006.10). 水生生物を用いた河川環境におけるダイオキシン類発生源寄与率の推定, 環境保全・公害防止研究発表会.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

・残留性化学物質データの組織化と発生源解析, 平成18年12月8日, 統計数理研究所, 24名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

姉崎 克典

北海道環境科学研究センター

阿部 圭恵

東京都環境科学研究所

安藤 晴夫

東京都環境科学研究所

茨木 剛

新潟県保健環境科学研究所

岩澤 理奈

宮城県保健環境センター

大高 広明

環境省環境調査研修所

大塚 英幸

北海道環境科学研究センター

大野 勝之

新潟県保健環境科学研究所

大原 俊彦

広島県保健環境センター

岡本 拓

広島県保健環境センター

小澤 秀明

長野県衛生公害研究所

柏木 宣久

統計数理研究所

加藤 謙一

宮城県保健環境センター

門上 希和夫

北九州市立大学

桜井 健郎

国立環境研究所

清水 明

千葉県環境研究センター

菅谷 和寿

茨城県霞ヶ浦環境科学センター

鈴木 滋

宮城県保健環境センター

鈴木 貴博

新潟県保健環境科学研究所

清家 伸康

農業環境技術研究所

友部 正志

茨城県霞ヶ浦環境科学センター

中村 朋之

宮城県保健環境センター

仁平 雅子

千葉県環境研究センター

橋本 俊次

国立環境研究所

半野 勝正

千葉県環境研究センター

日浦 盛夫

広島県保健環境センター

東野 和雄

東京都環境科学研究所

菱沼 早樹子

宮城県保健環境センター

星 純也

東京都環境科学研究所

村瀬 秀也

岐阜県保健環境研究所

村山 等

新潟県保健環境科学研究所

安田 裕

岐阜県保健環境研究所

山縣 晋

千葉県環境研究センター

山口 晃

新潟県保健環境科学研究所

山口 勝透

北海道環境科学研究センター

山本 央

東京都環境科学研究所

吉澤 正

千葉県環境研究センター