昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−11

専門分類

1

研究課題名

漸近展開の誤差評価

フリガナ

代表者氏名

シミズ リョウイチ

清水 良一

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

職  名

所長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

Xを基準となるp次元確率ベクトル,ΣをXと独立なp×p確率行列とする。Σが何らかの意味で単位行列に近いときに,ΣXの分布をXの分布のまわりで展開し,かつその誤差を評価することを目的とする。誤差の上限を確率行列Σ−Iのモーメントを使って与える。


2つの確率変数σとXが互いに独立でσ>0のとき,両者の積の分布FをXの分布Gの尺度混合という。σが1に近いときにはFはGに近いであろう。話をもう少し精密化してFをGの周りで展開することを考える。問題はこの展開を有限の項で打ち切った時の誤差の評価である。これまでに,比較的一般の場合について展開式の導出と誤差の上限の評価を行ってきた。展開式はGの導関数とσのモーメントで表わされ,また誤差の上限はσおよび〓の高次のモーメントを使って表現出来る。これを証明するのに特性関数と反転公式を使う方法と,Gを直接展開する方法とがある。前者の場合,展開式に現われるのはGの直交多項式であり,それに〓あるいはσ−1の高次モーメントが係数としてつく形になる。
後者では〓あるいは〓の高次モーメントを係数とする,やや複雑な展開式が自然なものとして得られる。ところで,原理的には任意のp(≠0)に対して,〓のモーメントを係数とする展開が可能である。分布関数Fを近似することが目的なら,どの展開が一番有利であるかが当然問題になる。これまでの計算ではGの周りで直接展開する方法がより小さい誤差限界を与えており,しかも例えばt−分布を正規分布の周りで展開する場合には自由度の小さいところでも誤差評価が出来るなどの利点があるとはいうものの,一般的にはどの方法がよいのか自明ではない。これまでの研究では多変量の場合については十分に満足すべき結果は得られなかった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文:
藤越康祝・清水良一
ある種の確率分布の漸近展開とその誤差限界
「数学」40巻3号(1988)に掲載の予定
Shimizu,R.
Expansion of scale mixtures of the gamma distribution
Journal of Statistical Planning and Inferenceに掲載の予定


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

前年度までにp=1の場合についてはXについてのゆるい条件のもとで可成り一般的な結果を得ており,さらにp>1の極めて特殊なケースについてもある程度のことが分ってきた。本年度の研究はΣの分布に関する制約条件をどこまでゆるめることができるか,に関心がある。特性関数を使う方法と,分布関数を直接展開する方法とがあるので,それぞれの長所をいかしながら,見通しのよい,結果にまとめたい,と考えている。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

藤越 康祝

広島大学