平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−66

専門分類

7

研究課題名

カイコの繭型の遺伝的分化に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

カイコは本来野生の昆虫を,絹生産のために人間が飼育,馴化して農業生物として作りあげたものであるが,世界の各地に適応放散して,独特の地域品種が形成された過程は不明である。そこで各品種に特徴的な繭型に関する分析を行い,データの数量的解析と遺伝分析により,進化の過程を探索するのが本研究の目的である。


カイコは本来野生の昆虫であったが、絹生産のため人間が飼育・馴化に成功して、現在の農業生産に作り上げたものである。その過程は約5000年以前に、中国の揚子江沿岸地域で始まり、次第に世界各地に広がり、現在みられる多くの地域品種が形成されたと推定されている。
そこで著者は、遺伝資源として保存されているカイコの多くの品種について、繭型の調査を行った。繭の形はくびれのある俵型、楕円型、紡錘型など複雑に分化がみられるが、これらの形状を著者の開発した簡易画像解析システムで計測して、それぞれの品種に特有の繭型の数量化を行い、それらの特性を検討した。また、品種間交配を行って、これらの繭型に関係する諸形質の後代検定を行った。
これらの形質の遺伝的分析に当たっては、多変量解析を用いるのが妥当であり、総合的な繭型の形成に関係する諸変数の組合せを代えながら、品種間における繭型の類似の程度を精査して、最終的にデンドログラムとして作図した。これにより、品種間の差を可視的にイメージとしてとらえることに成功した。これらの系統のグループ化の結果、実用系、特性系、テスターの3群に大別することができ、別に行った生化学的基準による分類と一致した。従って繭型による系統分類の可能性が認められた。
また、供試したこれらのクラスター分析の手法を比較すると、最長距離法、群平均法、重心法、ウォード法等でよい近似が得られたが、最短距離法、メジアン法、可変法等ではよい近似が得られなかった。この点については今後異なる変数組合せを用いてさらに検討を試みたい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.中田 徹・前田勇人・村上征勝 判別分析によるカイコの繭型の雌雄差の検討 統計数理 第39巻第2号 1992.3
2.中田 徹 カイコ特性品種の倍数体の繭重 北海道大学農学部邦文紀要 第17巻第3号 1991.3
3.T.Nakada Sequence of some Cocoon Traits in the Progeny Tests after Crossing between Wild and Domesticated Silkworms Proceedings of the 1st International Conference on Wild Silkworm 1992.3

1.中田 徹 カイコの繭型発現に関する伴性遺伝 日本蚕糸学会第61回講演要旨集 1991.4.3
2.中田 徹 カイコの繭形質に関する主成分分析、とくに雌雄差について 日本蚕糸学会第62回講演要旨集 1992.4.4
T.Nakada Cocoon Charaters of Hybrid between Wild and Domesticated Silkworms 19th International Congress of Entomology, Beijing 1992.6.27 - 7.04
T.Nakada Genetic Analyses on the Cocoon of Silkworm 19th International Congress of Entomology, Beijing 1992.6.27 - 7.04

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

現在,遺伝資源として本邦に保存されている,世界各地から収集された多くのカイコの系統について繭型の調査を行っている。繭の形はくびれのある俵型,楕円型,紡錘型などに分化しているが,これらの形状を著者の開発した画像解析システムで測定して,品種に特有の繭型の数量化を行い,地域品種の特性を把握すると共に,品種間の交雑実験により後代の遺伝的検討を試みる。そこで繭型に関する諸変数について多変量解析や,有効な統計分析法の開発に関して,専門研究者との共同研究を行い,以上の検討を効果的に進めたい。なお,この課題に関して,著者は中国やインドを始めとするアジアの温・熱帯地方を中心として,各国での保存系統の実態調査や共同研究を続行中である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所