平成132001)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

13−共研−1008

専門分類

3

研究課題名

ランダムな不均質を含んだ地下構造の地震波によるイメージング

フリガナ

代表者氏名

ニシザワ オサム

西澤 修

ローマ字

Nishizawa Osamu

所属機関

産業技術総合研究所

所属部局

地圏資源環境研究部門

職  名

主任研究員

所在地

TEL

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E-mail

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研究目的と成果(経過)の概要

地震波の波形は地下構造に関する重要な情報を含んでいる。これまで,地球内部は成層構造を基本とし決
定論的に構造を求めていた。しかし,実際は層境界や層の内部はランダムな不均質性を有しており,これを
反映して観測波形にはランダムなゆらぎが現れる。地震波のこうしたゆらぎもまた重要な情報であるが,ラ
ンダムな波形ゆらぎは十分に研究されず,じゃまなノイズと考えられ無視されていた。この研究では,地震
波のランダムなゆらぎが地下のランダム不均質構造に関する重要な情報を含んでいると考え,地震波ゆらぎ
とランダム不均質との関係を明らかにする。これによりランダムゆらぎを含む地震波によって決定した地下
構造の信頼性を客観的に評価することができ,物理探査や地震学でとり扱われる地震波データの処理法を革
新する技術を生み出すことができる。この研究では,モデルを用いた室内実験と数値実験を行い,モデル実
験データ処理による地下構造抽出能力を調べ,地震波探査法に対する精度評価を行う。
 ランダムな不均質構造を含む縮尺モデル,および数値モデルを作成し,室内実験と数値実験によって
模擬的な地震波伝播実験を行った。室内実験データの解析では多変量ARモデルの適用を試みた。その
結果,コヒーレンシーや相対ノイズ寄与率の値を統計的に扱うことにより,散乱波と反射波を区別でき
ることが明らかになった。いっぽう,数値モデルによる研究では,地下不均質構造による散乱波が地震
波に与えるゆらぎは,時系列上に混入したランダムノイズとは異なる影響をデータ解析に与えることが
示された。時系列上のノイズの場合には観測点を密にとることにより地下構造の決定精度を上げること
ができるが,ランダム不均質構造からの散乱波ゆらぎの場合は,観測点を密にしても地下構造決定精度
を上げることはできない。実際の地震波ゆらぎのほとんどはランダム不均質構造からの散乱波であるの
で,上記の実験事実は地震波による地下構造決定に関する重要な問題を指摘している。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文
Sivaji,C.,Nishizawa,O.,and Fukushima,Y.Relationship between fluctuation of arrival time and
energy of seismic waves and scale length of heterogeneity:An inference from experimental
study,Bull.Seism.Soc.Am.,91,292-303,2001.
Spetzler,J.,Sivaji,C.,Nishizawa,O.and Fukushima,Y.,A test of ray theory and scattering theory
based on a laboratory experiment using ultrasonic waves and numerical simulations by
finite-difference method,Geophys.J.Int.,148,165-178,2002.
Sivaji,C.,Nishizawa,O.,Fukushima,Y.,and Kitagawa,G.,A physical-model study of the statistics
of seismic waveform fluctuations in random heterogeneous media,Geophysical J.Int.148
576-596.
西澤 修,雷 興林,チャダラム シバジ 不均質媒質での地震波伝播モデル実験,地震 54,171-183,
2001.
ホームページ
http://staff.aist.go.jp/osamu-nishizawa/ldv/hetero j0.html

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

北川 源四郎

統計数理研究所

松島 潤

産業技術総合研究所