平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2008

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

磁力線固有振動数とGPS-TECの統合インバージョンによるプラズマ圏密度全球分布推定

フリガナ

代表者氏名

カワノ ヒデアキ

河野 英昭

ローマ字

Kawano Hideaki

所属機関

九州大学大学院

所属部局

理学研究院・地球惑星科学部門

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

43千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地球のまわり、電離層の外側には、プラズマ圏と呼ばれる領域が広がっている。この領域は、地球磁力線に沿って電離層から流れ出したプラズマによって満たされている。このプラズマ圏の磁気嵐等による変動を調べる事は磁気圏物理の重要なトピックであり、その為に、プラズマ圏プラズマの密度の全球3次元分布を知る事は重要である。

その密度分布情報を含むデータの一つに、GPS-TEC のデータがある。GPS(Global Positioning System)衛星は、現在全30機同時運用されており、地球に向けて電波を送っている。それを地上の受信点や低高度衛星で受信すると、GPS 衛星と受信点を結ぶ直線上でのプラズマ電子密度の積分量:TEC(Total Electron Content)を求められる。

また、別のデータとして、地上磁力計や人工衛星搭載磁力計で観測される磁力線固有振動数のデータがある。すなわち、磁力線共鳴(field-line resonance、以下 FLR)と呼ばれるメカニズムによって地球磁力線が固有振動すると、それを磁力計で観測する事ができ、その振動の周波数(磁力線固有振動数、以下 fFLR)が得られる。そして、その fFLR は、磁力線の「重さ」、すなわち「磁力線に沿ってプラズマ質量密度を積分した値」(この量を以下 M とする) と逆相関の関係にあるので、磁力計で観測した fFLR から M が推定できる。

以上の2種のデータが与えるのは、求めたい3次元プラズマ密度分布に対して、異なる方向に沿っての積分値である。すなわち、GPS-TEC データでは衛星と受信機を結ぶ直線上の積分値、fFLR データでは地球磁力線沿いの積分値である。本研究では、GPS-TEC データと fFLR データを組み合わせて、両データの特性を生かしたトモグラフィー的手法によってプラズマ圏プラズマ密度全球3次元分布を推定する。

上記推定の為に我々が考案した方法論があり、その妥当性の確認の為、その双子実験的手法による以下のテストを行った。まず、密度未知の点を2点設定した。その2点は1本の磁力線に沿っており、第1点は地球から最も遠い位置、第2点は磁力線が地球を離れてすぐの位置、に設定した。これには磁力線上の位置による f 項と GPS-TEC 項への寄与比率の違いを調べる意味があった。

その結果としては、第1点の密度を n1、第2点の密度を n2 として、「n1 は主として f 項が、n2 は主として GPS-TEC 項が、決める」と判った。つまり、f と GPS-TEC の性質から、上記の式において、「f 項は地球から遠くで効く」「GPS-TEC 項は近くで効く」と自然に重み付けがなされているようである、と判った。

本研究が有用なのは f 項と GPS-TEC 項が同程度に効く領域なので、第1点と第2点の中間に第3点を設定して、上記と同じテスト n1 と n3 に対して行い、n3 は 実際に f 項とGPS-TEC 項の両方に依存している事を確かめた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

河野英昭, 上野玄太, 才田聡子, 中野慎也, 樋口知之、磁力線固有振動数とTECの統合インバージョンによるプラズマ圏密度分布推定-経過報告-、名古屋大学宇宙地球環境研究所研究集会「電離圏・磁気圏モデリングとデータ同化」、名古屋大学宇宙地球環境研究所、2016年3月7日。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(開催しなかった。)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

才田 聡子

北九州工業高等専門学校

中野 慎也

統計数理研究所

樋口 知之

統計数理研究所