平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2032

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

家計貯蓄種類の選択基準のコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ヤマシタ タカコ

山下 貴子

ローマ字

YAMASHITA TAKAKO

所属機関

流通科学大学

所属部局

商学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

22千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究では、2008年のリーマン・ショック後の米国家計の金融商品保有パターンの変化について実証することを目的に、ベイズ型コウホートモデルを用い『Survey of Consumer Finance』(米国)の1989, 1992, 1995, 1998,2001,2004,2007,2010年 の3年毎8時点における調査データについて分析を行った。
 コウホート分析では複数時点の継続的調査の結果をコウホート(世代)という視点で有機的に結びつけ、家計の世帯主年齢・世代、調査時点の時代という3つの要因による効果を分離し、それぞれの要因が金融資産選択や金融資産種類への選好の変化(マインドの変化)に及ぼす影響の大きさを比較、考察することを可能にする。3要因の影響の大きさを示す効果の変動幅のみならず、変動のプロフィールをも考察することにより、金融商品市場動向の予測にある程度適用できる。
 分析の結果、流動性資産やリスク性資産には時代効果に金融危機のインパクトが見られたが、年金準備金では一貫して漸増していることが示された。
 通貨性預金である'Transaction Accounts(TA)', 'Certificates of Deposit(CD)'を見ると、時代効果が高くなっている。これら安全資産の総金融資産に占める割合は2000年代後は10%を割り込む水準であったが、リーマン・ショック後の2009年3月末時点で14.3%に上昇しており、安全で流動性のある資産へのシフトが見られた。
 リスク性資産の'Stocks','Bonds'であるが、時代効果が低くなっていた。1980年以降の残高構成では40%台で推移していたものが、2010年には30%台前半に落ち込んだ。リーマン・ショックによる時価総額の低下が主な原因で、前述した'TA', 'CD'の時代効果が高くなっていたことからも、安全資産へのシフトもあったと考えられる。さらに'Stocks'の保有率について分析してみた結果を見ても、時代効果が低くなっていることから、リーマン・ショック後に'Stocks'の保有を回避した世帯が存在することが示された。
 年金準備金である'Retirement Accounts'を見てみると、時代効果は金融危機後も高くなっている。年金準備金のウエイトは1980年代に資産構成の20%代後半で推移していたものが1990年台には30%に達し、2008年12月末から2012年12月末までの間、最も大きな割合を占めていた。金融危機を経ても、年金の確保など予備的動機は強いことが示された。また1970年代以降IRAや401(k)が導入され、1946〜63年に生まれたベビーブーマー世代が中心となってこうした制度を用いるようになったことからも、当該出生コウホートの世代効果が高くなっていることが示されていた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

山下貴子・中村隆(2014)「リーマン・ショック後の米国家計金融資産選択行動」『流通科学大学リサーチレター』Vol.17

以下は、本研究に関連するこれまでの研究成果である。

(1) 日本の家計消費支出に関する分析

山下貴子・中村隆(2013)「家計のポートフォリオ選択の動向」『流通科学大学論集 流通・経営編』Vol.25-2, p.49〜61.

Yamashita, T. and Nakamura, T. (2008). Macro-structural baases of consumption in an aging and low birth-rate society. In Kohlbacher, F. and C. Herstatt (eds) The Silver Market Phenomenon Business Opportunities in an Era of Demographic Change, Springer.

山下貴子・中村隆 (2006). 家計消費動向の動態的分析. 季刊家計経済研究, AUTUMN No.72. (査読付き)

(2)日米家計の金融資産選択行動に関する分析

山下貴子・中村隆(2010). 家計の金融資産選択行動2 ?ベイズ型コウホート分析を用いた日米比較?. 流通科学大学 リサーチレター,No.10.

Yamashita, T. and Nakamura, T. (2005). Comparison of Financial Portfolio Selection in Aging and Low-birth-rate Societies of Japan and U.S. In Proceedings of Royal Bank Research Seminar, Academy of Marketing Science.(査読付き)。

山下貴子・中村隆(2002). 第5章 金融消費市場の長期展望. 田村正紀編著『金融リテール改革』所収, 千倉書房.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

中村 隆

統計数理研究所