平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−79

専門分類

7

研究課題名

表皮組織中の腫瘍の幾何学モデル

フリガナ

代表者氏名

ホンダ ヒサオ

本多 久夫

ローマ字

所属機関

兵庫大学

所属部局

経済情報学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ヒト皮膚の表皮組織中に微少な腫瘍細胞巣〓ができることがある。この細胞巣は,3次元空間に隙間なく詰まった多面体表皮細胞に取り囲まれたほぼ一定の形をしており,一種の多面体とみなすことができる。
多面体の腫瘍は増殖しながら表皮細胞間結合をずらし,また破壊して形成されたと考えると,腫瘍形成の過程で腫瘍がどのような多面体を経過してきたかを考察できる。この結果を観察と対比する。
(〓たとえばリンパ腫由来のポートリエ微小腫瘍。また癌由来のときはパジエツト現象とよぶ。)


共同研究員による会合を部分的なものも含めて東京で4回(9,11,1,3月),福岡で1回(2月)実施し,以下の進歩があった。
1.表皮中の微小膿瘍の観察
今山によって進められているポートリエ微小膿瘍の形成機序を全員で検討した。これは表皮組織中に悪性リンパ腫由来の白血球がつまったほぼ球状の構造体で,内部に膿を含んだものであり,血液中の白血病細胞が表皮組織を経て排泄される過程であると考えられている。
今山により作製された表皮部分の標本を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察した。表皮と真皮の境界面は真皮側から多くの突起(真皮乳頭)が出ている。突起のいくつかには先端に穴があいており白血病細胞は真皮側よりこの穴を通って表皮にはいる。表皮では多層上皮細胞からなる組織が白血病細胞の塊により押しひろげられて球状の洞を形成している。多層上皮細胞は洞の壁部分では偏平になり洞側ではデスモソームが見られず,反対側では上皮細胞とのデスモソーム結合が見られる。
以上のことから,微小膿瘍は上皮細胞に囲まれた空間であり,これは多層上皮細胞が詰まった3次元的組織の細胞間隙に白血病細胞が集塊し,上皮細胞間のデスモソームをずらせ,ついには解離させることによって上皮細胞層に空間を形成したと考えて,ひとまずモデルを作るのが妥当であることがわかった。
2.2次元模型の作製と3次元への拡張計画
2次元の多角形配列をゴム輪と小さい金属輪で作製し,細胞間隙が無理やり開くときには多角形がどのように変形するのがもっともらしいかを議論した。次に,3次元の多角体パターンに拡張するための方策を議論した。さしあたっては表皮細胞をケルビンの14面体が隙間なくつまったものと考え,ここでの細胞間隙拡大を考えていくことにした。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本多,種村,他「組織中の2種類の細胞の配列パターン」
日本生物物理学会第27回年会(東京大学’89,10/6−8)
本多,種村,他「分化のラテラル抑制による細胞配列パターン形成」
形の科学会第16回シンポジウム(中央大学’89,11/24−25)
今山,他「ポートリエ微小膿瘍の形成機序の研究」
皮膚リンフォーマ研究会(横浜市立大学’90,8/3−5発表予定)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

今山の撮形した表皮中の腫瘍組織の顕微鏡写真に基づき,本多の幾何学的細胞モデルを使って,表面組織モデルを作る。このモデルに種村の3次元空間中の多面体充填モデルをあてはめて電算機シミュレーションを行う。
年4回の打合せ会議(このうちの1回は九州大学医学部において実地調査を予定)と1週間程度の電算機使用のための統数研滞在を1回,計画している。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

今山 修平

九州大学

種村 正美

統計数理研究所