平成162004)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

16−共研−2030

専門分類

6

研究課題名

プラズマ粒子速度データの混合分布モデルによる分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ ナガトモ

中村 永友

ローマ字

Nakamura Nagatomo

所属機関

札幌学院大学

所属部局

経済学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 人工衛星による磁気圏プラズマの観測的研究は,プラズマ粒子の速度分布のモーメント量(数密度,平均速度,温度)を用いた電磁流体的な扱いによって多くの有意義な結果を導いてきた.このときプラズマは局所熱平衡状態にあることが仮定され,その速度分布の確率密度は3次元正規分布で与えられる(統計力学ではMaxwell分布と呼ばれる).その一方で,衛星の観測技術は急速な進歩を遂げ,3次元速度空間においてより精密な速度分布の形状を高時間分解能で測定できるようになった.その結果,熱平衡状態にまで緩和していない,速度空間に複数の極大をもつようなプラズマ分布が,多くの領域や状況で見られることが明らかにされてきた.それぞれのビームを分離した上で各々のビームごとのモーメント値を算出し,それに基づいた議論が必要である.地球物理学の分野では,2成分以上が部分的に重なりのある場合に,その複雑な分布の形状を客観的に評価することは非常に困難な問題であり,さらに数多くの観測例を扱う場合には,より一層深刻な問題となっている.この種のデータは日々刻々と衛星から送信されてきており,これらの基本的問題解決と実用的なソフトウェアが要請されている.
 本研究で扱っているプラズマ粒子速度データは,基本的にデータ自身の問題と,モデル適用上の問題が存在する.まず前者は,(1)離散の値(極座標値)+実数値の重み(擬頻度)という形式のデータである,(2)高速と速度0付近の粒子が観測不能であるため分布が切断されている,(3)部分的にゆがんだ分布がある,(4)ノイズでない拡散粒子の存在,(5)データ数(粒子数)は数千から数万と大規模データセットであること,(6)データ形式が本来極座標形式の方角データ(directional data)である,(7)速度空間の両極方向が観測機器の都合で観測不能であること,ことなどが挙げられる.後者は,以上のデータの性質を受けて,(8)成分分布の選定の問題,(9)方角データを基礎とする分布(Fisher分布,Kent分布など)の混合やロバスト化・skew化,(10)最も重要な成分分布数の推定問題,などが挙げられる.このデータ解析において従来手法をストレートに適用した結果が,すでに発行されている.しかし,より厳密な解析を行なう場合には様々な工夫が必要となってくる.
 16年度はこれらの問題のうち,(2)の問題を中心に論文として仕上げ,現在投稿中である.その他には,(3)(4)(10)の課題の検討を進め,これらに加えて時系列で得られるデータセットをどのように扱うか検討を進めている.具体的には,平均や分散行列の点過程的な扱い,関数データとしての扱いが可能であるかどうか研究を進めた.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文

中村永友, 上野玄太, 樋口知之, 小西貞則 (2005), 欠損混合分布モデルとその応用(投稿中)

Genta Ueno, Nagamoto Nakamura, Tomoyuki Higuchi, Takashi Tuschiya, Shinobu Machida, and Tohru Araki (2002), Application of Multivariate Maxwellian Mixture Model to Plasma Velocity Distribution, in S.Arikawa and A.Shionhara eds., "Progresses in Discovery Sience, Final Report of the Japanese Discovery Science Project," Lecture Notes in Computer Science, Springer-Verlag, 382-383.

Genta Ueno, Nagamoto Nakamura, Tomoyuki Higuchi, Takashi Tuschiya, Shinobu Machida, Tohru Araki, Yoshifumi Saito, and Toshifumi Mukai (2001), Application of multivariate Maxwellian mixture model to plasma velocity distribution function, Journal of Geophysical Research, 106, 25655-25672.

Genta Ueno, Nagamoto Nakamura, Tomoyuki Higuchi, (2001) Separation of Photoelectrons via Multivariate Maxwellian Mixture Model, The proceedings of The Forth International Conference on Discovery Science, Lecture Notes in Computer Science, Springer-Verlag, 2226, 470-475.


学会等発表

中村永友, 上野玄太, 樋口知之, 小西貞則 (2004), 欠損混合分布モデルとその応用, 2004年度日本分類学会研究報告会,東洋英和女学院大学,東京,2004.12.17.

Nakamura,N., G.Ueno, T.Higuchi, and S.Konishi (2003), Multivariate Normal Mixture Model with Missing Region, Science of Modeling, ---The 30th Anniversary of the Information Criterion (AIC)---, Pacifico Yokohama, Yokohama, 2003.12.14-17.

中村永友, 上野玄太, 樋口知之, 小西貞則 (2003), 観測不能領域を含むデータに対する混合分布モデルの適用, 研究集会「ノンパラメトリック統計モデルと平滑化法」,統計数理研究所, 2003.3.28-29.

中村永友,上野玄太,樋口知之 (2002),混合分布モデルによるプラズマ粒子速度データの分析,2002 年度統計関連学会連合大会, (日本統計学会第70回大会,応用統計学会年次大会,日本軽量生物学会年次大会),東京,2002.9.7-10.

上野玄太,中村永友,樋口知之 (2002),プラズマ速度分布データへの正規混合分布モデルの応用,2002 年度統計関連学会連合大会, (日本統計学会第70回大会,応用統計学会年次大会,日本軽量生物学会年次大会),東京,2002.9.7-10.

Genta Ueno, Nagatomo Nakamura, Tomoyuki Higuchi, Takashi Tsuchiya, Shinobu Machida, Tohru Araki, Yoshifumi Saito, and Toshifumi Mukai (2001), Application of multivariate Maxwellian mixture model to plasma velocity distribution function AGU 2001 Fall Meeting, 2001.12.10-14, San Francisco, USA.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

川崎 能典

統計数理研究所

小西 貞則

九州大学

土谷 隆

統計数理研究所

樋口 知之

統計数理研究所