昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−80

専門分類

8

研究課題名

著者推定の数理統計学的研究−日蓮の三大秘法禀承事の真偽判定−

フリガナ

代表者氏名

ムラカミ マサカツ

村上 征勝

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は,これまで数量的なとり扱いがほとんどなされていない,著作の真偽判定や著者の推定という,いわゆる“著者推定の問題”に対し,文体に関する数量的な情報を利用した数理統計学的解析法を確立し,文献学,書誌学の研究に新領域を開拓することにある。具体的には,現下の文献学的レベルにおいて真偽未決とされているが,しかし日蓮の実践的な仏教思想を理解する上で極めて重要な文献である『三大秘法禀承事』の真偽判定問題をとりあげその結論導出を試みる。


本年度の研究実施状況は次の通りである。
1.解析に用いる文献50編(日蓮の著作24編,約8万5千語,偽作16編,約5万1千語,日蓮の弟子の著作5編約1万3千語,真偽未決の文献5編,約2万語)のデータをローマ字表記から漢字カナ表記へ変換し,そのチェック,修正を終了。
2.現在使用しているテキスト「昭和新修日蓮聖人遺文全集」に関し,解析に用いるテキストとしての妥当性を問題とする仏教研究者もあったことから,別のテキスト「昭和定本日蓮聖人遺文」によるデータベース作成に入りほぼ全体の1/3を入力。
3.予備的な分析で,これまで真作として扱ってきた文献の一部が日蓮以外の手による可能性が強まったため,その文献に関する資料調査を行い,1編が弟子の著作と判明,他のものについては現在資料調査を継続中である。
4.当初の研究予定には入っていなかったが,本研究に関連する研究として,法華経28巻の著作順序の推定を行うため,サンスクリット版の法華経28巻約5万語のデータベースを作成し,データチェックを行った。
5.文献の統計解析に必要なプログラムの作成及びデータベース作成,修正等のために必要な種々のプログラムの作成をした。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昭和55年に,『三大秘法禀承事』及び日蓮の著作17編,偽作8編の計26編の文献(約8万語)に基づく研究結果を発表した。しかしながら,解析に用いた文献の数が26編と少なかったこと,主語,述語等の構文に関する情報,及び論理の展開に関する情報が欠けていたこと,解析に用いた既存の統計手法の使用に問題がある等の反省に基づき,今回の3年計画の研究では解析すべき文献を24編追加するとともに,講文に関する情報,論理の展開に関する情報を加えて,『三大秘法禀承事』の真偽判定を試みる。同時にこのような多次元情報を利用した著者推定問題のための新しい数理統計学的手法の開発をも試みる。研究三年目の今年度は,ローマ字表記から漢字カナ表記へ変換したデータの再チェック及び構文に関する情報の入力を行い,この問題の真偽判定に関して最終的な結論を出す予定である。
ところで,この研究はその性質上,仏教学,言語学,心理学等の専門知識が必要であり,したがって統計学の研究者を中心に,これらの分野の研究者と協力して研究を進めることが不可欠である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 瑞叡

立正大学

春日 正三

立正大学

古瀬 順一

群馬大学

中村 隆

統計数理研究所

藤本 煕

明星大学

安本 美典

産能大学

山元 周行