平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−98

専門分類

8

研究課題名

社会調査におけるランダム・サンプリングの理論的再検討

フリガナ

代表者氏名

ヌマザキ イチロウ

沼崎 一郎

ローマ字

所属機関

東北大学

所属部局

文学部

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、社会調査で得られる回答の集合をランダム・サンプルと考えてよいのかという問題を検討することである。特に、従来行われているように回答者を無作為抽出することが、実際の分析対象である回答そのものの集合ランダム・サンプルと見なすことを保証するものなのか、この点を理論的に考察したい。


通常の社会調査では、ある特定の社会集団を母集団と捕らえ、個体の有限集合からサンプルを無作為抽出すればよいと考えている。しかし、社会調査の本当の研究対象は個体そのものではなく、個体の回答である。従来のサンプリングは、各個体をある特定の回答の組み合せ(ベクトル)と等置し、個体のサンプリングでもってベクトルのサンプリングに代えているわけである。しかし、各個体が必ずある一通りの答え方をするとは限らないし、反復調査をすれば異なる回答をする場合もある。
社会的態度調査においても、反復調査間の相関はそれほど高くないことが知られている。このような回答の変動を考慮に入れたサンプリングを考えられないものかというのが、本研究の出発点であった。この問題について、共同研究者間で討議を行った。
議論の結果、本研究の課題は、サンプリングの問題というよりは「回答の揺れ」の問題であるということが明らかとなった。回答者のサンプリングが問題なのではなく、回答者と回答の関係という個体内の心的メカニズムの問題なのである。従って、統計学的検討以前に、心理学的・社会学的な検討が必要だということが判った。
さらに、回答の揺れを重視すべきか否かは、調査の目的に大きく依存する。従って、具体的な研究課題を離れて、一般的な回答の揺れの問題を考察することに意味があるかどうか、さらなる検討が必要となった。本年度の研究では、問題点の初歩的な整理と検討を行った。今後は、具体的な調査データに即して、さらに考察を深めてみたい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

通常の社会調査では、ある特定の社会集団を母集団と捕らえ、個体の有限集合からサンプルを無作為抽出すればよいと考えている。しかし、社会調査の本当の研究対象は、個体そのものではなく、個体の反応(回答)であるはずだ。母集団とすべきは、サンプル個体の属する社会集団ではなく、その集団に属する全個体の全反応である。個体の反応は不変ではなく、同一調査を反復すると異なる反応が得られる可能性がある以上、個体の(可能な)反応の集合は無限集合と考えるべきだろう。そうすると、個体を無作為抽出する従来の方法では、回答の集合の無作為性を保証できないのではないか。
この問題を、統計数理研究所の研究者との集中的な共同討議を通して理論的に考察し、新しいサンプリングのモデル作りを目指したい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

海野 道郎

東北大学

坂元 慶行

統計数理研究所