平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−15

専門分類

1

研究課題名

ベイズとベイズの定理

フリガナ

代表者氏名

マツナワ タダシ

松縄 規

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

統計基礎研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ベイズの定理の一つの解釈を行う。特に事前分布について、その基礎モデルとしての意味と作り方を考える。関連して、ベイズ自身が思考実験によって基礎モデルをどのように構築しようとしたかを考察する。また、ベイズが何故生前に彼の結果を公表しようとしなかったのを、彼の思想、時代背景などを考慮しながら推察する。


ベイズの定理の一つの解釈を行った。この定理を構成する事前分布、尤度、事後分布と言った今日定着している概念はベイズの原論文では明確ではない。彼の論文では、確率の概念が一通りではなく、また期待、チャンスと言った用語と混在して、非常な困難を伴う形で使われている。本研究では、確率の概念はコルモゴロフの測度論的なものに基づき、事前分布をアプリオリに与えられたものとする立場を取らず、実データあるいは思考実験に基づいて統計基礎モデルを構築することをまず考えた。
次にこの基礎分布を基に一般的な条件の下で、分布の発展を考えた。この際、ルジャンドル変換を用いてある意味での最適な分布を得ることを試みた。この過程で正準分布やカルバック・ライブラー情報量の間に成立するピタゴラスの関係式が自然な結果として得られることを示した。
ベイズがなぜ彼の結果を生前に発表しなかったかを考察した。色々考えたが、彼と同時代のヒュームの因果律批判、あるいは帰納の正当化の問題に明確に反論するまでに到らなかったのが大きな理由の一つではないかと思う。
これに比べ、プライスが楽観的態度でベイズの論文を世に出してくれた幸運を感ぜずにはおれない。問題は結局事前分布の設定に結びついてくるが、このことについて統計学や科学哲学に於て現代に到るまで決定的な解答が与えられてこなかった様に見受ける。筆者が上記で述べた基礎モデルの構築はこの問題に対する全く新しい原理と観点から一つの接近の仕方を与えたものである。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

松縄 規(1994), 分布の起源, 統計数理, 第42巻, 第2号, 1994


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

現代統計学の主要な考え方の一つであるベイズ統計学の根幹は、いわゆるベイズの定理に依存している。ところがこの定理はベイズの論文(1764)の複雑さ、特に事前分布に関する理解の難しさ、多様さもあって、現代に到るまで様々な問題を提起して来た。本研究もベイズ統計学の研究が集中的に行われていることで知られているが、そのためにも、従来殆ど挑戦されることのなかった、ベイズ統計学の原点に戻った基礎理論を確立することが必要だと思われる。
また、ベイズがなぜ彼の定理の公表を生前にしなかったのかは一つのなぞであるが、ベイズ解析の思想と関連して、その理由を研究する事も計画している。この事は統計学の歴史研究という点でも有意義な課題だと考えている。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

Zhao Yi

総合研究大学院大学