昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−72

専門分類

7

研究課題名

カイコの倍数体利用に関する研究,特に繭諸形質の発現に関する統計的分析について

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

農業生物における倍数体の利用は,植物界では広い範囲で行なわれており,品種改良に成果がみられるのに反し,動物界ではまだ端緒についたばかりである。その理由は動物植間の生殖システムの違いにより,倍数体の誘起と継代が動物では甚だ困難な点にある。著者はカイコを用いてこれらの遺伝生理を検討し,倍数体の誘起と継代に成功したので,それらの諸形質の発現に関する検討を行なうのが本研究の目的である。


農業生物における倍数体の利用は,一部の栽培植物では行われており,品種改良などに成果が得られているが,動物では倍数体の誘起と継代が困難であり,今後の問題となっている。著者はカイコを用いて倍数体の誘起に成功したので,有用諸形質の倍数体における発現について検討を行なった。
カイコはいうまでもなく絹生産を目標とした飼養され,その評価は絹の生産効率に関わる諸形質を総合的に調査に決められる。すなわち,卵のふ化率,幼虫の生存期間・生存率・桑の食下量,繭の重量と絹繊維の特性等について多項目の遺伝学的検討が必要であり,特にその中心的な繭の重量や繊維特性に関して検討した。
カイコは雑種強勢が強く現われるので,異なる二系統を育成し,その雑種第1代(〓)の卵を作って供給している。従ってそれぞれの純系で倍数化(2n→4n)を行なって,〓を得られヽば,倍数体の繭形質(この場合4n×4nであるから4倍体の繭)を調査できるが,純系の倍数化が技術的に困難であり,著者は別の方法を試みている。すなわち,目的とする系統に適当なマーカー遺伝子をもつ系統を交配し,産下直後卵に過冷却処理を行なって〓型の倍数体(4n)を誘起する。この方法によれば産下・処理卵を観察することにより容易に倍数体(4n)か正常(2n)かを判定できるので,ふ化幼虫を分離飼育することによって,4nと2nとの繭重等の差を知ることができる。さらに〓型4nに2nを交配して戻し交雑(〓)を得て,これは4n×2n=3nであるから,3倍体型〓の形質発現を知ることができる。
このようにして得られた3倍体の繭形質を調査したところ,これらの形質発現は交雑組合せによって相当に異なることが判明した。〓型4n♀×純系2n♂の交雑とその逆交タイプとを比較すると繭の重量,繭糸長に差がみられ,繭糸繊度(糸の太さ)には有意差はみられない。この逆交タイプ純系2n♀×〓型4n♂の場合,繭重や繭糸長ですぐれており,やヽ細目の長い糸が得られることが分った。一般に繭重や繭糸長を逆抜すると糸の太さも連動して太くなり,正の遺伝相関がみられるが,この事実は実用上の見地からも興味深い,また一般に〓型3nは2nよりすぐれた結果を示すので,倍数体育種の可能性を示唆するデータを得たことになる。また併せて4倍体の形質発現の特性についても検討した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

中田徹・菊池邦夫(1986)
家蚕倍数体の育成に関する研究
12.〓型3倍体の誘起とその繭形質について
東北蚕糸研究第11号
中田徹・菊池邦夫(1987)
家蚕倍数体の育成に関する研究
13.誘起4倍体の繭重
東北蚕糸研究第12号


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

カイコの実用品種諸系統を用いて倍数体の誘起を行ない,ここに得られた複2倍体型の4倍体に由来する後代の各種の3倍体の形質発現について検討する。
カイコはいうまでもなく絹生産のための世界各地で飼育されているが,農業生物としての品種の評価は,卵から幼虫・蛹・成虫に到るまでの絹の生産効率に係わる諸形質を総合して決められる。即ち,卵の孵化率,幼虫の生存期間,生存率および食下量,繭の重量と繊維特性等多項目の遺伝的検討が必要であるが,今回は主として繭形質の発現に関して,遺伝および環境要因の調査を行なう。この過程で分散分布その他の統計学的手法が必要とされるので,専門研究者との共同研究を要望する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所