平成222010)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

22−共研−12

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

5

研究課題名

計算統計学に基づく設計段階での信頼性・リスク解析

フリガナ

代表者氏名

カイセ トオル

貝瀬 徹

ローマ字

Toru Kaise

所属機関

兵庫県立大学

所属部局

大学院経営研究科産学人材育成センター

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

近年,工学などに基づく人工物(以下,アイテム)に関する信頼性への関心が高まっている.その理由として,アイテムを製品として市場に投入している企業にとって不具合の発生は膨大な損失を発生させるだけでなく,その企業の存続も危ぶまれることにもなるなど経営上の危機が挙げられる.また,社会基盤の多くが各種のアイテムに依存しており,これらのアイテムの不具合の発生が多くの人々の生命や財産の危機を引き起こすおそれがあることも信頼性への関心の理由として挙げられる.
アイテムの不具合は未然防止が重要であり,特に開発・設計段階での信頼性・リスク解析をデザインレビューや物理的な故障解析,計算力学によるシミュレーション,加速試験データなどと融合させて行うことが必要である.すなわち,設計段階において徹底した信頼性予測を行い,アイテムの不具合を設計変更により未然に防ぐ手法の開発が求められる.特に,統計学の応用は,このような信頼性解析に関する有用な方法論の構成を可能とすることが考えられる.
そこで,本研究では設計段階での信頼性予測を目的にした計算統計学に基づく解析手法の提案を行った.具体的には,加速試験データと設計部署での過去の経験による知識に基づいた信頼性解析手法について,階層ベイズおよび情報量規準,MCMC,モンテカルロ・フィルターを用いて構成した.また,宇宙開発などで問題となる地球上での加速試験では実施できない極限状況での劣化の進行に関して,連続時間型の確率微分方程式に基づくモデリングとパラメータ推定法,およびリアルオプション理論を用いた未知の極限状態での信頼性予測を計算統計学に基づいて構成した.
尚,上記の研究内容については,既に学会で発表され論文誌にも掲載されている.また,これらの成果に関する数値計算については統計数理研究所の計算機環境を利用した.