平成242012)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

24−共研−4302

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

染色体微細構造変異を用いた高精度な放射線被曝量推定法の開発

重点テーマ

統計数理による減災・復興

フリガナ

代表者氏名

スウトウ ユミコ

数藤 由美子

ローマ字

Suto Yumiko

所属機関

放射線医学総合研究所

所属部局

緊急被ばく医療研究センター

職  名

室長

配分経費

研究費

40千円

旅 費

6千円

研究参加者数

5 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

(1)二動原体染色体(不安定型染色体異常)に基づいた被ばく線量推定法
【目的】
 1個体の放射線被ばく線量と染色体異常頻度の間に成り立つ線量反応曲線(検量線)の信頼区間をあらかじめ作成しておき、被ばく患者の染色体異常頻度をあてはめて線量を推定するという現行の手法の妥当性を検討する。
【材料と方法】
 日本人、非放射線作業従事者13人(健常人男女22〜59歳)の末梢血に7通りのコバルト60ガンマ線(0、0.5、1、2、3、4、5Gy; 線量率0.5Gy/分)を照射し、ギムザ染色法によって末梢血培養リンパ球の染色体の二動原体染色体出現頻度をスコアリングし、データとして用いることとした。
 現行法ではポアソン回帰を用い、強度が従う反応曲線に2次関数を仮定する。1検体のスコアリング・データを用いて得た2次関数: Y=A+a*D+b*D*D [Y:二動原体頻度、D:被ばく線量(Gy)、A:非被ばく時の二動原体頻度(バックグラウンド値)、a:単飛跡の放射線に誘発される異常に対する係数、b:複飛跡の放射線に誘発される異常に対する係数]と95%信頼区間から、患者の被ばく線量を推定する。本研究では2次関数の係数を固定効果とランダム効果に分離した。適切と思われる事前分布を与え、マルコフ連鎖モンテカルロ法により固定効果の平均と標準偏差を求めた。
【結果と考察】
 仮にランダム効果がなければ、13検体を用いて作製した信頼区間は1検体によるものを13の平方根で割った程度の幅と予想される。本研究から、実際には半分程度に減少することがわかった。このことから、ランダム効果、すなわち検体(個体)差は比較的少なく、サンプルサイズを大きくすることで固定効果の推定精度を上げられる可能性がある。今後は次のステップとして、反応曲線として2次関数を仮定することの妥当性を検討する必要があると思われる。

(2)転座染色体(安定型染色体異常)に基づいた被曝線量推定
【目的】
 (1)における不安定型染色体異常に基づいた線量推定法は、不安定型染色体異常が半減期2〜4年で消失していくことから、現在得た検体を用いた過去の事故の被ばく線量推定や、長期間被ばくを受けた患者の線量推定、患者の長期追跡調査には適していない。ヒト24種の染色体を染め分けるMultiplex FISH法の確立により、現在では安定型染色体異常のひとつである転座染色体を指標にすることが可能である。しかしながら、高線量被ばくでは染色体異常のパターンが非常に複雑になり、解析手法を確立する必要がある。また、加齢や生活習慣(喫煙など)にともないバックグラウンド値が上昇すること、特定の染色体間でより高い頻度で転座が発生する可能性があることが知られている。したがって本研究では、転座染色体を用いてより正確な線量推定ができる解析方法を検討することとした。
【研究経過】
1)日本人、非放射線作業従事者86人(健常人男女16〜69歳)および被ばく患者19人のMultiplex FISHデータを得た。
 今後、テスト・サンプルとして3)の24人のデータについて予備的な分析(染色体の分類とスコアリング法の統一化)を実施する予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【学会発表】(1件)
Shuhei Mano,Miho Akiyama,Momoki Hirai,Yumiko Suto:
Random effects in measurement of radiation exposure by biodosimetry.
XXVIth International Biometric Conference(2012年8月26〜31日、神戸)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催実績なし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

穐山 美穂

放射線医学総合研究所

平井 百樹

放射線医学総合研究所

間野 修平

統計数理研究所