平成21990)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

2−共研−22

専門分類

3

研究課題名

音楽演奏のモデリングと解析

フリガナ

代表者氏名

タグチ トモヤス

田口 友康

ローマ字

所属機関

甲南大学

所属部局

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

音楽演奏とは,楽譜に対して演奏者が独自の演奏情報を付加しつつ楽譜を音響的事象へ写像する行為であると見ることが出来る。本研究はこのプロセスを演奏のモデリングという観点から把握し,演奏家が付加した演奏情報の諸パラメータを同定する。


音楽演奏とは,楽譜に対して演奏者が独自の演奏情報を付加しつつ楽譜を音響的事象へ写像する行為であると見ることが出来る。本研究は,このプロセスを演奏のモデリングという観点から把握し,演奏が付加した演奏情報の諸パラメータを同定することを目的とする。
今年度は,前年度の成果,すなわちピアノ曲の演奏における速度リズムとフレージングアゴーギクの分析を対象とした(1)ベイズモデルの考察,(2)3拍子系速度リズムの静態的および動態的な表示法,を具体的事例に適用することに重点をおいた。
対象曲にはショパンのワルツ曲を選んだが,その理由は(1)名曲であって古今の大家が手掛けている(演奏サンプルが多い),(2)演奏に際して楽譜からの変位の自由度が大きく(ルバート奏法など)演奏家ごとに特徴が得られ易いと思われる,(3)比較的単純な音形の旋律でデータ採取がしやすい,などである。
第1次検討として,中村,Lipatti,Smendziankaの3ピアニストによるショパンのワルツ10番の一節を解析した。我々のベイズモデルにより演奏速度の拍子リズムとフレージングトレンドへの分解を行ったところ,3者それぞれの演奏速度を特徴づける結果がえられた。そこでこの結果をふまえ第2次検討として,入手可能な他の6人の演奏家の演奏についての分析,および他のワルツ曲の演奏での同様な分析へと対象をひろげた。
上記第1次検討の結果については学会にて口頭発表[1]した。一方,その後の分析結果を加えたものについては,第2回音楽知覚認知国際会議(1992年2月,ロスアンゼルス)にての発表を考えており,目下
“A trend−rhythm decomposition of expressive timing in piano performance”(仮題)
として取りまとめる作業を行っている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.田辺,田口,太田:ピアノ演奏における速度リズム時系列のベイズ法による解析。日本音響学会音楽音響研究会資料MA90−24(1991年1月)。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

芸術的演奏がいろいろな程度において記譜からずれていることは,Seashore(1938)以来知られており,その物理的分析ならびに心理的分析は昨今の音楽心理学の要重な課題となっている。我々は平成1年度の研究(1−共研−23)において,速度リズムとフレージングアゴーギクを同定するベイズモデルを考察し,また速度リズムの規準的な表示法を導いた。そして3拍子系のピアノ曲における演奏家固有の演奏情報を抽出することを試みた。
次年度では,上記同定方法を多くの事例に適用して,実際上の経験を蓄積しながら,モデルの精密化をはかる。奇数拍子系と偶数拍子系の特性の差異の有無にも注意しつつ,演奏家固有の演奏解釈と言われるものの物理的特性を把握する方法論を提起したい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

太田 雅久

甲南大学

寒河江 雅彦

岐阜大学

田辺 國士

統計数理研究所