平成262014)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

26−共研−1025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

6

研究課題名

古代社会の人口動態の推定

フリガナ

代表者氏名

ツチヤ タカシ

土谷 隆

ローマ字

Tsuchiya Takashi

所属機関

政策研究大学院大学

所属部局

政策研究科

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

古代社会の人口の推定は、考古学や歴史学における重要な研究テーマの1つである。ヌジ人名史料から復元された家系図および個人名が記載されるヌジ文書の情報を用いて,古代メソポタミアの時代のヌジ社会の人口動態推定を行い、紀元前15世紀における世界の中の1小都市ヌジの人口推定としての妥当性について考察している。
当初は「ヌジ人名史料」のうちの使用可能な全データを用い、家系図およびその他の情報との相互関係を凸2次計画問題として定式化することにより、ヌジ社会の人口動態推定を行った。その後、史料に表れる人物の97パーセントを占めるテヒプティラの家系図に関連するネットワークに特化した凸2次計画問題を解き、前述の結果と比較・検討することを試みた。後者の場合には、個々の生誕年・死亡年は一意には決まらないが、寿命の長さに関しては、初期値をある幅でランダムに仮定しても、特定の人々に対してはユニークに定まることを確認した。ヌジ人名史料から得られた比較的大きな家系図とその他の家系図との関係について、地主と小作人、富豪と庶民というような関係が家系図を比較することによって文書を介した関連から見いだせるかどうか試み、得られた結果から見えてくる社会の構図について議論した。当時の社会が中央集権的な社会であったのか、あるいは比較的平等な社会であったのかを図る指針を与えるものと思われる。また、先行研究における最大家系図テヒプティラの家系と、我々の構成した家系図に見られた相違点について検証した。同一の家系図に属すると見なす条件の相違、あるいは確率的に同一家系図とする設定の相違が考えられる。個人名を索引の形式でアルファベット順に整理された書物「ヌジ人名史料」の情報からコンピュータ・プログラムにより自動的に構成された家系図には、より厳しい条件が課せられていることを確認した。
 ヌジ文書に記載された親子兄弟の関係、および同文書に記載されている人物名から最適化をもちいて紀元前15世紀の人々の個々の寿命を推定する例はユニークであり、考古学の立場からも成果を期待されている。データ公開に向けて不明確な記述の検証をおこない、疑問点が解消されつつある。分担者による会合およびメールによって議論をおこなった。
 研究成果を Physica A に発表した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文
S. Ueda, K. Makino, Y. Itoh and T. Tsuchiya, Logistic growth for the Nuzi cuneiform tablets: Analyzing family networks in ancient Mesopotamia, Physica A, Vol.421 (2015) 223-232.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

2014.05.26 13:00〜16:00 統計数理研究所共同研究室
2014.10.09 13:30〜16:00 統計数理研究所共同研究室
2014.10.23 13:30〜16:00 統計数理研究所共同研究室
2014.12.04 13:30〜16:00 統計数理研究所共同研究室
2015.01.15 13:30〜16:00 統計数理研究所共同研究室
2015.02.13 13:00〜16:00 統計数理研究所共同研究室
2015.03.16 14:00〜16:00 統計数理研究所共同研究室

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 栄明

統計数理研究所

上田 澄江

統計数理研究所

牧野 久実

鎌倉女子大学