昭和611986)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

61−共研−73

専門分類

8

研究課題名

“自然体験”による子供の心の教育効果に関する統計的研究

フリガナ

代表者氏名

センノ サダコ

千野 貞子

ローマ字

所属機関

いわき明星大学

所属部局

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

人口の都市集中化,自然破壊,学歴偏重の風潮など,日本の子供たちにとって,現在の社会環境は必ずしも健全であるとは言い難い。家庭内暴力,校内暴力や弱い者いじめなどの現象は,一つにはこのような社会構造・生活環境が起因していると思われる。これを検証する目的で,国立・那須甲子少年自然の家の利用者に対するアンケート調査を行う。特に自然の中での集団生活の体験から得られる教育効果について統計的測定を行う。


実施状況:昭和61年5月19日調査打合せ,質問(自然体験,生活体験に関する質問等)作成準備,更に10月16日,17日第一次質問票作成,11月上旬那須甲子少年自然の家に宿泊中の小,中学生35名に対し,実験的面接調査を実施し,質問の妥当性,信頼性を再検討した。11月25日質問票作成完了,12月10日福島県白河市の小学生5,6年200名を対象としたプリテストを行った。この分析を基に昭和62年1月11日関東地区及び福島県の小学校(26校),中学校(25校)宛郵送調査(サンプル数2000名)を実施,2月10日回収を完了し,現在統計的分析(AIC,多次元尺度分析など)を行っている。
成果:アンケート調査の集計結果をみると,「日の出・日の入りを見たことがない」20%,「草花を摘んだことがない」30%,「木の実拾いをしたことがない」32%など,子供の日常生活から自然は遠のいており,「友達と殆んど遊ばない」53%,「親類,友人宅に独りで泊ったことがない」30%と閉鎖的な傾向が窺われ,家の手伝いなども半数がしていない。しかし,家族,隣人に対する挨拶などは,よくする(73〜87%)という現代っ子の性格がみられた。又質問「学校に行くことが楽しいか。」を取り上げ,各質問の寄与率をAICではかったところ,1.「挨拶をよくする」2.「歯をみがく」3.「親友がある」4.「家の手伝いをする」の順に関連度が強くみられ,家の躾が「学校での楽しさ」に大きく寄与していることが窺われた。一方,自然体験に関する質問と生活体験に関する質問の相関をみると強い関連度を示し,自然に対して経験豊かな子供は「ヒモを結ぶ」,「長時間歩く」,「鉛筆を削る」などの生活体験も豊かである。しかも,この場合の生活体験は,学校や家庭で躾けられたものではなく,子供自身の自己啓発的な体験であることに着目したい。少なくとも,自然との接触が,子供のサバイアビリティを強めているということが言えそうである。
「学校での楽しさ」が家庭の躾によるという結果が出たものの,一度「いじめ」などにより子供にとって苦しみが訪れた場合,簡単に死を選ぶという現在の風潮を解析するためには,自然の中でのびのびと駆けまわる体験によって自己啓発的活力を強め,いじめられても,むしろそれをバネとし,成長の糧として伸びていく力を養って行かねばならないことが暗示されたことは,本研究の大きな成果となったと思われる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

既発表:
1.少年の日常生活における自然とのかかわり(I)−−日本人の森林観に関する国際比較を背景として−−1986.4.4,日本林学会
2.国際比較による日本人の自然観と少年の日常,1986.7.25,日本統計学会
3.Comparison of Attitudes Toward Nature among Nations 1986.8.4:1986 International Statistical Symposium.Taipei,R.O.C.
4.少年の日常生活に関する一考察,1986.8.27,日本行動計量学会
5.少年の日常生活における自然とのかかわり(II)−−日本人の森林観に関する国際比較を背景として−−1987.4.3,日本林学会


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

人口の都市集中化,自然破壊,学歴偏重の風潮など,日本の子供たちにとって,現在の社会環境は必ずしも健全であるとは言い難い。家庭内暴力,校内暴力や弱い者いじめなどの現象は,一つにはこのような社会構造・生活環境が起因していると思われる。これを検証する目的で,国立・那須甲子少年自然の家の利用者に対するアンケート調査を行う。特に自然の中での集団生活の体験から得られる教育効果について統計的測定を行う。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

坂本 忠雄

国立那須甲子少年自然の家

澤田 利夫

国立教育研究所

白相 岳男

宇都宮大学

鈴木 義一郎

統計数理研究所

南条 善治

東北学院大学