昭和601985)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

60−共研−48

専門分類

9

研究課題名

大気汚染の発生と拡散に関する実証的研究

フリガナ

代表者氏名

ヒグチ イサオ

樋口 伊佐夫

ローマ字

所属機関

帝京技術科学大学

所属部局

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

大気汚染の伝播や拡散は複雑で時間空間の観察スケールのみならず汚染ガスの種類によっても現象は異る。とくに三次元的考察が必要であるが,従来は二次元拡散方程式を基本に,大きなシミュレーションも行われて来た。この研究では現象に対する洞容と,観測網のデータ,気象データ其他を用いて,従来慣用されている謬見を正し,データにもとづくデータにもとづいて正しい描像を行う。


研究実施期間中に共同研究者が統計数理研究所においてしばしば会合し,研究打合せを行った。
当研究の発端は,樋口,佐藤による相関解析やそれを変形した方法による,東京都のデータの解析と,星らによる物理的な意味をもつ変量選択をした回帰の方法の千葉のデータの適用において,しばしば定性的な結論が一致するので,それぞれ意見の交換をしながら,より着実なものに深めようとすることにあった。
東京の場合においては,冬期における〓の異常な高濃度が問題で,逆転層の高さが大きな影響を及ぼすと考えられる。逆転層の高さは一日2回茨城県館野で観測される高層気象データから推定する以外にない。これは一点で観測したものを関東全体で代表させようという粗いものであるが,くわしく追求すればしっかりした鮮かな結論が得られるものと予想していた。しかしこれは成功しなかった。一日の午前の気象データと午後の〓濃度平均が他に比べやや高相関という以外には何も得られなかった。
東京タワーにおけるデータと高層気象データとのつきあわせもうまくゆかなかった。(タワーでは〓を測定しているが〓のデータがない)。要するに高層気象より下の空中のデータがないため汚染の拡散のしくみに関しはっきりした結論が出しにくかった。折角追いつめて最後のつめが情報不足のためうまくできなかったことは甚だ残念であるが,これまで多く行ったデータ解析とそれによる多くの知見を消滅させてしまうのはもったいないので,構想を練りなおしてもう一度挑戦してみるつもりである。
星の研究はさらに因子分析などにより実証性をたかめ,専門誌に発表した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

この研究のもとになっている事項については環境科学特別研究R−5OのシンポジウムやR53の研究報告集のいくつかに発表しているが成書としては,堀・鈴木・堪木・樋口編「大気環境のサーベイランス」(東大出版会昭和59年)の第4章にまとめてある。
星の仕事に関連した最近の発表はT.INOUE,M.HOSHI&M.TAGURI
REGRESSION ANALYSIS OF NITROGEN OXIDE CONCENTRATION(A mosphere Environment Vol20.No1.pp71−85 1986


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

この研究は樋口が以前科研費によってはじめたものである。研究をはじめた頃(5,6年前)は,大気汚染の拡散について拡散方程式を金科玉条に考える研究者が大多数であった。樋口は当時研究補助者であった佐藤とともにこれについて疑問をいだき,自動車などから発生する〓のデータを相関解析やそれをmodifyした方法でたんねんに調べた結果通常の拡散方程式が事実にあわないと信じるにいたった。その意見は機会あるごとに表明して来たためか,やみくもに拡散方程式を持ち出す人は今では少くなった。しかしこれまでの結果を整理した形でまとめていないこと,特に気象データとの関連があいまいであるので,今後の研究に役立たせるためにもまとめておく必要がある。(データ,プログラム,解析の途中結果がすべて統数研にある)


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

佐藤 定夫

東京電機大学

星 守

電気通信大学