平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−87

専門分類

7

研究課題名

癌細胞の浸潤モデルの完成と外科手術への応用

フリガナ

代表者氏名

イマヤマ シュウヘイ

今山 修平

ローマ字

所属機関

九州大学

所属部局

医学部

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

癌は外科的に切除するのが最も確実である。従って癌細胞を完全に排除でき、かつ最小の手術範囲が予想できれば理想的である。
我々は癌細胞の組織内移動様式を病理学的に観察し、種村の作製した種々のモデルとの尤度を検討し癌細胞移動モデルを作製中である。そこで本研究を拡大し、モデルから周囲組織への癌細胞の転移領域を予測し、さらには実際の手術範囲決定への理論完成を目標とした。


皮膚癌の一種で、病巣が表皮層を水平方向に移動・分裂・転移するPaget病がある。従来、Paget病の手術において、病巣の皮疹辺縁部を皮疹からどの程度まで切除すれば、高い治癒効果が得られるかの明確な定量的指針が存在しなかった。この問題の解決の糸口を見いだすため、われわれは前年度の共同研究で得た知見を元に、今回は皮疹辺縁部からのPaget細胞の距離・表皮内での深度のそれぞれの区画におけるnestサイズ=1の細胞分布のみに注目して、前回と同様に指数型及び正規型分布モデルを当てはめ、統計解析の結果、前回と同様、正規型モデルが選ばれた。従って、このnestサイズの空間分布だけでも十分定量的指針が得られることが明らかとなった。そして、今回の結果の研究論文作成の準備を行った。
動物に表皮構造として、しばしば六角形の積層秩序構造が見られる。上皮組織においては、真皮側では比較的無秩序な配列が見られるのに対して、表皮側ではなぜこのような規則的な構造の秩序形成が起こるのかを説明するモデルが従来なかったが、われわれは前年度発表した幾何学モデルを改良して、かなり乱れた初期構造から出発しても六角形の秩序形成が起こることを示した(生物物理学会にて発表)。この結果についても論文作成の準備を行った。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本多久夫・種村正美・今山修平:「表皮組織の秩序形成」日本生物物理学会第31回年会 1993.10.14

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

手術により得られた癌組織から連続的な病理標本を作製し、癌細胞の3次元的な組織内分布図を九州大学で作製する。取り上げる癌は、社会的に緊急度の高い悪性黒色腫および、とりわけ手術範囲が問題になっている乳癌の特殊型である。
癌細胞が最先端から遊離し周囲の正常組織へ転移する領域の癌細胞分布図を基に、種々の空間的な癌細胞転移モデルの作製および最尤モデルのあてはめが主な実施項目となるが、これは統計数理研究所との共同研究で始めて可能である。
皮膚は体表面の組織であることから癌の浸潤範囲の臨床評価、手術結果、5年生存などによる最終的臨床評価の比較検討に他因子の混入が少なく、理想的な研究対象である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

桐生 美麿

九州大学

清水 信之

九州大学

竹内 実

九州大学

種村 正美

統計数理研究所

沼原 利彦

香川医科大学

野田 啓史

九州大学

本多 久夫

兵庫大学