平成172005)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

17−共研−10

専門分類

9

研究課題名

氷床内部に取り込まれた空気分子の拡散過程

フリガナ

代表者氏名

フカザワ トモコ

深澤 倫子

ローマ字

Fukazawa Tomoko

所属機関

明治大学

所属部局

理工学部

職  名

助教授

所在地

TEL

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研究目的と成果の概要

南極大陸に存在する巨大な氷の塊(氷床)は、過去数十万年の間に雪と共に堆積した様々な物質を保存しているため、過去の気候や環境についての情報源である。氷床深層部から掘削した氷の解析により、産業革命以降の二酸化炭素増加に伴う平均気温の上昇や、氷期−間氷期サイクルに伴う大気組成の変動等、過去の地球環境に関する重要な知見が得られている。ところが最近になって、氷床中に存在する過去の空気分子が長い時間をかけて氷床内部を拡散移動していることが明らかになった(Geophys. Res. Lett. 26 (1999) 91)。氷床内で起こる拡散は空気分子の分布を変化させてしまうため、掘削した氷床氷から分析した空気成分の組成は、過去の大気組成を正確に再現していないということになる。従って、氷床解析データから正確な過去の大気組成の情報を読みとるためには、氷床において分子拡散が生じる以前の空気分子の分布を復元することが不可欠である。
 本研究では、氷床における空気分子のダイナミクスを明らかにし、氷床解析データを用いた精密な大気組成復元法を確立することを目指して研究を進めている。本年度は、氷床における分子分布の時系列変化の計算機シミュレーションに取り組んだ。この成果として、約70万年間の分子分布の時系列変化を計算することに成功している。この研究により、温室効果気体である二酸化炭素やメタンの過去数十万年におよぶ濃度変動と近年問題になっている地球温暖化との関係を正確に把握することが可能になると期待している。