平成172005)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

17−共研−1032

専門分類

4

研究課題名

社会環境の変化に対応した新たな調査法の研究

フリガナ

代表者氏名

マエダ タダヒコ

前田 忠彦

ローマ字

Maeda Tadahiko

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

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E-mail

URL

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年、社会環境の変化(特にプライバシー意識の高まり)に伴って、住民基本台帳等を利用した確率標本に対する従来型の実施方法による調査の妥当性が脅かされる状況が続いている。このため、従来型調査法に代替するような、あるいはそれに補助的な情報を与えるような他の実施手段による調査法の研究が必要とされている。面接法以外の調査法については相対的には実証的研究が不足しており、社会環境の変化に対応した新たな調査法の特質を明らかすることは喫緊の研究課題である。
 本研究は,各方面での実施頻度が高まっているWeb調査に着目し、他の自記式の調査法(主に郵送法)と比較した場合の特徴を、実験的調査のデータに基づき検討する。テーマの性格上、産学共同プロジェクトとして推進するものである。
 平成17年度においては,平成16年度に取得した郵送調査(1グループ),およびWeb調査(2グループ),更に平成17年度6月に前記調査に関連させて実施した郵送調査(1グループ)の,計4回の調査データについての比較分析を行った。具体的には,上記の4条件の調査は,いずれも参加社が保有する登録者集団(2グループ)から2回の調査参加を得て,Web→郵送の順と,郵送→Webの順に同じ項目による回答を求める,いわゆるパネル調査を行ったものになっている。このような実験的設定を行うことにより,Web調査と郵送調査間の比較を単純に行うだけではなく,同一対象者の調査モードが異なることによる回答行動の変化を捉えることも,本研究の一つの目的になっている。
 またこれらの調査のうちWeb調査では,対象者による回答行動のログを取得し,これを分析することも意図している。この回答行動の分析については今後の課題である。
平成17年度に行ったWeb調査と郵送調査の比較分析により,(1)両条件の調査結果の違いの間には,Web調査の参加者がいわゆるインターネットユーザであるが郵送調査についてはそうとは限らない,そして,インターネットユーザと非ユーザの間では回答傾向が異なる(ある種の項目においてそれが顕著である)という理由による差が含まれていること,(2)この差は,例えば郵送調査の結果をインターネットユーザに限って集計をしても,統計的な誤差の範囲を超えた差が見られるケースも多数残ること,が判明している。この結果は,単にユーザという特性だけで対象者集団を同一視することができないことを意味しており,二つの調査のユーザ同士の間に見られる差の原因がどこにあるのかを慎重に検討する必要があることを示している。ここまでの成果を,別記の通り学会発表および速報論文の形で報告している。
 これらの差には,対象者の属性要因に帰することができる部分を,より心理的な要因にまで踏み込まねば解釈できない要因の両者が含まれることが想像され,この点について平成18年度も継続して本共同研究を推進する予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

下記の3点が主な成果である。
 
・ 大隅 昇 (2006). インターネット調査の抱える課題と今後の展開, ESTRELA No.143 (2006年2月号), pp. 2-11.
・ 前田忠彦・大隅 昇 (2006). 自記式調査における実査方式間の比較研究?ウェブ調査の特徴を調べるための実験的検討?, ESTRELA No.143 (2006年2月号), pp. 12-19.
・ 前田忠彦・大隅 昇・中谷吉孝・上嶋幸則・渡會 隆・簑原勝史・野田善治 (2006). 自記式調査における実査方式間の比較研究, 日本行動計量学会第33回大会発表論文抄録集, pp.256-259.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 行っていない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上嶋 幸則

株式会社 博報堂

大隈 昇

統計数理研究所

志賀 直生

?東京サーベイ・リサーチ

瀧中 勢子

?東京サーベイ・リサーチ

中島 一郎

株式会社 博報堂

中田 清

株式会社 博報堂

中谷 吉孝

株式会社 博報堂

野田 善治

?東京サーベイ・リサーチ

吉村 宰

長崎大学

渡曾 隆

?東京サーベイ・リサーチ