平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2003

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

表皮ランゲルハンス細胞の空間配置モデル

フリガナ

代表者氏名

クボタ ヤスオ

窪田 泰夫

ローマ字

Yasuo KUBOTA

所属機関

香川大学

所属部局

医学部医学科 皮膚科学

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

50千円

研究参加者数

7 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 樹状細胞の一種である「表皮ランゲルハンス細胞」は,抗原提示細胞として皮膚免疫の要となる細胞であり,多くの研究者が様々な視点や方法論で研究を行っているが,その空間配置パターンを統計学的に扱った研究はなかった。われわれは,「表皮ランゲルハンス細胞は,その役割をはたすために表皮内で空間的に最適配置をしている」と考え,表皮ランゲルハンス細胞の空間配置パターンについて空間統計学を応用した一連の研究を続け成果をあげている(平成11年−13年共同利用登録(沼原利彦)、平成14年度以降共同研究プログラム 2001-ISM-CRP-0003, 2002-ISM-CRP-2034, 2003-ISM-CRP-2028, 2004-ISM-CRP-2036, 2005-ISM-CRP-2038, 2006-ISM-CRP-2043, 2007-ISM-CRP-2003)。
 平成14年度の共同研究で,免疫抑制剤=タクロリムス軟膏の,表皮ランゲルハンス細胞の空間配置パターンに与える影響を,BALB/cAマウスを用いて検討した。タクロリムス軟膏外用により,表皮ランゲルハンス細胞の空間密度と分布の規則性が有意に減少することを「空間配置の統計」により解明し,世界で初めて報告した。また,タクロリムスにより,相互作用ポテンシャルモデル式の形自体には大きな差がないこともみいだした。また1枚あたりN=250〜350 の表皮ランゲルハンス細胞地図18枚の解析を行ったが,そのボロノイ分割パターンにあらわれる多角形の辺数分布は,Tanemura & Hasegawaが1980年に報告(Geometrical Models of Territory: J. theor. Biol. (1980)82, 477-496)したランダム充填モデルに ほぼ一致することを見いだした。この基礎的配置データを礎に、空間配置の解析を色々試行し、解析プログラムの改良を続けてきた。
 平成18年度、アトピー性皮膚炎治療剤タクロリムス軟膏外用によるマウス表皮ランゲルハンス細胞空間配置パターンの変化について:第62回形の科学シンポジウム(2006年11月4日,大阪)を発表した。
平成19年夏、空間配置の基礎的解析に利用してきたMahtematica(R)(ウルフラムリサーチ)が、5.2から6.0へと大きく発展した。このバージョンアップにともない、これまで使用してきた解析プログラムについて、Mahtematica(R)6.0への移行動作確認作業を行い、
1) データ読み込み→点配置マップ作図
2) ボロノイ多角形分割(単純)作図
3) ボロノイ多角形分割(周期的境界条件)作図&観察されたボロノイ多角形の辺数分布カウントvsモデル分布との比較
4) モンテカルロ法によるHopkins-Skellam index算出
について、第64回形の科学シンポジウム(2007年11月3日、横浜)・形の科学会誌(第22巻第2号2007 166-176頁)において発表公開した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

  Toshihiko Numahara, Toshifumi Nakagawa and Takashi Takaiwa: Mathematical assessment of the spatial distribution of Langerhans cells in guinea pig epidermis,Journal of Dermatological Science, Vol 4, p202-207, 1992
  Toshihiko Numahara, Masaharu Tanemura, Toshifumi Nakagawa,, Takashi Takaiwa. Spatial data analysis by epidermal Langerhans cells reveals an elegant system. Journal of Dermatological Scinece 2001;25(3);219-228《博士(医学)論文:博乙第150号 沼原利彦,香川医科大学,平成12年10月4日》
  Toshihiko NUMAHARA, Kiyo NUMAHARA(Kagawa Medical University), Masaharu TANEMURA(ISM), Junko Katsuura, Yoshie MATSUOKA, Chieko SUGIMURA, Yasuo KUBOTA (Kagawa Medical University):The effect of Tacrolimus on spatial distribution of epidermal Langerhans cells:The 12th Japan-Korea joint meeting of Dermatology (2001年11月8-9日東京)
  沼原利彦(香川医大皮膚科),種村正美(統計数理研究所),沼原紀予,勝浦純子,松岡由恵,杉村知恵子,窪田泰夫(香川医大皮膚科):タクロリムスはマウス表皮ランゲルハンス細胞の空間分布を変える:第101回日本皮膚科学会総会(2002年6月7-9日,東京)/日本皮膚科学会雑誌 112巻5号,p718
  沼原利彦(香川医大皮膚科),種村正美(統計数理研究所),沼原紀予,勝浦純子,松岡由恵,杉村知恵子,窪田泰夫(香川医大皮膚科):BALB/cAマウス表皮ランゲルハンス細胞(ELC)空間配置パターン〜タクロリムス外用による変化〜:第13回日本樹状細胞研究会(2002年7月12日,岡山)
  沼原利彦(香川医大皮膚科),種村正美(統計数理研究所),沼原紀予,勝浦純子,松岡由恵,杉村知恵子,窪田泰夫(香川医大皮膚科):免疫監視のための陣形〜表皮ランゲルハンス細胞の空間配置メカニズム〜:第1回皮膚免疫アレルギー懇話会(2002年10月5日,東京)
  沼原利彦、沼原紀予(医療法人社団 ぬまはら皮ふ科)、種村正美(統計数理研究所)、森上純子、松岡由恵、横井郁美、窪田泰夫(香川大学医学部皮膚科学):アトピー性皮膚炎治療剤タクロリムス軟膏外用によるマウス表皮ランゲルハンス細胞空間配置パターンの変化について:第62回形の科学シンポジウム(2006年11月4日,大阪)
 沼原利彦、沼原紀予(医療法人社団 ぬまはら皮ふ科)、種村正美(統計数理研究所)、森上純子、松岡由恵、横井郁美、窪田泰夫(香川医科大学医学部皮膚科学):Mathematica vs 空間配置の基礎的解析:第64回形の科学シンポジウム(2007年11月3日、横浜);形の科学会誌 第22巻第2号2007 166-176頁

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所

沼原 紀予

ぬまはら皮ふ科

沼原 利彦

ぬまはら皮ふ科

松岡 由恵

香川大学

森上 純子

香川大学

横井 郁美

香川大学