平成212009)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

21−共研−2030

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

日米学生比較:家族の絆

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

Takeshi Ueki

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

昨年度(平成20年度)に、アメリカの4つの大学(コーネル・ウェブスター・ネブラスカ・ハワイ)と日本の4つの大学(札幌市立・共立女子・同志社・香蘭女子短大)で配布・回収したアンケート用紙を基に、データベースを作り始めようとした。ところが、回収された用紙を見ていて気付いたのだが、特に日本人学生の被験者の性別を見ると、圧倒的に女性の方が男性より多かった。これはまずいと思い、すぐに明治大学と明治学院大学で知人を捜し、追加調査を行い、男子学生数の増加を図った。ところが、両校とも文系学部のクラスで、調査のため教室へ入室して初めて気付いたのだが、やはり女子学生の方が数は多く、これは失敗したと気付いた。そこで、もうあきらめて、とにかく調査は続行した。
最終有効回答数をみると、札幌市立178通、共立女子156通、同志社140通、香蘭女子206通、明治196通、明治学院93通であり、コーネル147通、ウェブスター198通、ネブラスカ276通、ハワイ119通であった。つまり、日本計969通、アメリカ計740通である。そこで、男女比を見て大変驚いたのであるが、性別の無回答を除くと、日本は男子21.5%で女子78.0%、アメリカは男子22.2%で女子77.3%となり、ほぼ同率となった。偶然の一致というこの結果には、驚愕してしまった。確かに男子学生数は少ないが、偶然にも日米の男女比がほぼ同率というわけで、これで分析することにした。
日英ふた通りのアンケート用紙を作成した。計32問のクエショネアーであるが、性別や年齢等の質問が3つあり、家族の絆に関わる質問が12問、いじめに関わる質問が17問である。
家族の絆に関する調査では、われわれは仮説を持っていた。つまり、日本人専門家が予測するのとは反対に、「アメリカ人学生の方が、日本人学生より家族の絆は強い」というものであった。そこで分析は、SPSSの多重コレスポンデンス分析を利用し、詳細を見るためクロス表を作成した。国籍と性別を含み、特に家族の絆に直接関わる5つの質問項目の計7つでプロットすると、日本とアメリカの周辺に集中するカテゴリポイントに面白い結果が見られた。そこでクロス表を作成すると、更に面白い傾向が見られた。詳細は省かせてもらうが、多重コレスポンデンス分析とクロス表から得られた結果は、アメリカ人大学生の方が日本人大学生よりかなり明瞭に家族の絆は強いという結果が出た。私共の仮説が正しかったことが証明されたが、それでは、本当にアメリカ社会の方が日本社会より家族の絆は強いのかと質問されると、少し躊躇せざるを得ない。
つまり、アンケート調査に答える心と、実際に行動する時の心にギャップが考えられるからである。「病院に駆けつけるか、会社でプレゼンをするか」と問うたとき、会社のプレゼンという言葉に対する理解度合いに文化相違が存在したり、「たてまえ」と本音の使い分けの問題もある。アメリカ人学生は日本人学生と比較して、何が正しく何が正しくないかという自己判断が強いという特徴もありそうだ。日本人は無意識に、会社と家族を一部分オーバーラップして考えるが、アメリカ人は対立概念として明確に分離して考える傾向にあるようだ。いくつかの理由が考えられるが、現段階でこれ以上の検証は難しく、あくまでも推測の域を出ない。

後半のいじめ問題も、日米で相違が見られたので、次のように簡単にまとめておく。
1.「いじめられた経験」は、日本人学生よりアメリカ人学生の方が格段に多い。
2.「いじめられた時期」は、日米ともに、小学校高学年と中学生時代が最多である。
3.いじめの内容に、日本人学生とアメリカ人学生の間に相違がある。
4.「いじめられてどう思ったか」の質問に、「死にたく思った」と「非常に辛かった」は、日本人学生の方が格段に多かった。
5.「いじめられた相手とその後どうなったか」は、日本人学生に「和解した」が多く、アメリカ人学生には「口を利いていない」「会っていない」が多かった。

いじめに関しては、協力してくれたアメリカ人教員の中から、是非このテーマでもっと調査して欲しいという声があがり、現在、二次調査を計画しているところである。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.「家族の絆といじめ問題?日米比較調査」
植木 武・山森 芳郎・石橋 義永・吉野 諒三・Elaine Wethington・Qi Wang・Robert Edmondson,
  第82回日本社会学会大会報告書要旨集. p.122.

2.「日米国際比較にみる家族の絆?大学生からみた家族への思い」
  植木 武・山森 芳郎・石橋 義永・吉野 諒三・Elaine Wethington・Qi Wang・Robert Edmondson,
  共立女子大学総合文化研究所報告第16号. pp.33, 34. 共立女子大学総合文化研究所.
  2010年2月.

3.『シンポジウム 日米国際比較による家族の絆といじめ問題』(日本語・英語68頁)
植木 武・山森 芳郎・石橋 義永・吉野 諒三・Elaine Wethington・Qi Wang・Robert Edmondson,
共立女子大学総合文化研究所. 2010年2月24日.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

国際シンポジウム(日・英両語)
テーマ: 「シンポジウム 日米国際比較?家族の絆といじめ問題」
日時: 2009年7月24日  13:20〜14:50
場所: 共立女子大学 本館512番教室。
パネリスト: 植木 武・山森 芳郎・石橋 義永・Robert Edmondson(逐次通訳者: 小西 將文)
参加者: 来賓2名(共立女子大学理事長・学長)、学生60名、総合文化研究所員2名。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

吉野 諒三

統計数理研究所