平成272015)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

27−共研−21

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

臨床・全ゲノム・オミックスのビッグデータの解析に基づく疾患の原因探索・亜病態分類とリスク予測

フリガナ

代表者氏名

ニシノ ジョウ

西野 穣

ローマ字

Nishino Jo

所属機関

名古屋大学大学院医学系研究科

所属部局

臨床医薬学講座生物統計学分野

職  名

特任助教

 

 

研究目的と成果の概要

  リウマチ、糖尿病、心疾患、多くの精神疾患などは、多数の遺伝因子と環境因子が関わるとされ複合疾患と総称される。これらの遺伝因子の同定、さらに、遺伝因子を亜病態分類・診断・予測に用いる事は「ゲノム医療」として将来の医療のあり方のひとつとして期待されている。現在、世界的に複合疾患に対してケースコントロールゲノムワイド関連解析(case- control GWAS)が進み、多く関連遺伝変異が同定されてきている。しかし、多くの複合疾患では、同定された変異を集めても家系分析による遺伝率(疾患発症に関わる遺伝因子と環境因子のうち遺伝因子の占める割合)をほとんど説明できていない。この主な理由は、効果サイズが小さく有意水準に達しない関連変異が多い事であると予想されている。
  本研究の目的は、このような効果の小さい多数の関連遺伝変異を適切にモデリングするために、GWASデータに対し階層混合モデルを構築し、各複合疾患の関連変異の割合や効果サイズの分布を推定する事、そして推定した構造に基づいて効率的な関連遺伝変異の同定、さらに、遺伝因子を亜病態分類・診断・予測につなげる事である。
  本年度は、前年度のモデル構築・シミュレーション評価に続き、多くの疾患(リウマチ、統合失調症、双極性障害、冠動脈疾患等)のGWASに対して、階層混合モデルを適用した。その結果、階層混合モデルは有効に働く事が確認でき、複合疾患は一般に、非常に多くの関連変異が存在するがその効果サイズは小さいという事を定量的に確認することができた。さらに、複合疾患の間でも遺伝的な構造の違いはとても大きい事がわかってきた。例えば、リウマチは複合疾患の中でも、関連変異の割合が小さく(〜数パーセント)効果かサイズが大きい、統合失調症はその逆で関連変異の割合が非常に大きい(〜30パーセント)が効果サイズは小さい、ということである。これらの内容は、統計関連学会連合大会にて学会発表を行い論文はもうすぐに投稿できる予定である。