平成242012)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

24−共研−1020

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

6

研究課題名

ソブリンリスク計量化のための統計モデル開発

フリガナ

代表者氏名

ヤマシタ サトシ

山下 智志

ローマ字

Yamashita Satoshi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

先進各国における財政の国債および政府保証債(ソブリン)依存度の増加にともない、金融機関の資金運用対象としてのソブリンの重要度が増している。また、ソブリンの大量発行や途上国の経済危機に伴い、ソブリンのデフォルトリスクが意識されるようになった。
これまでソブリンリスクの計量化は市場における取引価格の変動を対象にすることが主流であった。これは、社債に比較してソブリンは流動性が高く、任意の時点での時価評価が可能であったためである。
今回の共同利用では国際協力の立場からソブリンへの投資リスクを計量化した。これは、ソブリンを市場売却するのではなく、償還期限まで保有した場合のデフォルトリスクを想定することになる。ソブリンのデフォルトリスク推計モデルには、市場データによる推計、格付情報による推計、マクロ経済情報による推計があるが、この研究ではマクロ経済データを説明変数にしたデフォルト確率推計モデルの構築を行った。
本研究の成果は、国際協力銀行によって平成24年度に開発されるソブリンリスク評価システムに実装された。このシステムを通じて、今後の日本国からの途上国融資の合理化に貢献できる。
24年度開始時点までに用意されていた具体的な作業は以下の項目であった。
・ソブリンのデフォルトデータの整理
・デフォルトの厳密な定義を決定する
・各国のマクロデータベースの構築
・有効なマクロ変数の選択と、変数変換の検討

24年度中に実行した課題は以下の4点である。

1. ソブリンデフォルト確率推計モデルの構築
前年度に整えられた条件をもとに、システムに実装されるモデルのプロットタイプを作成した。一般的な統計型信用リスクモデルである2項ロジットモデルを用いた。その際、説明変数データの情報量の少なさを補うため、因子分析的な変数合成方法を検討した。

2. ソブリンリスク評価システムの設計と外注
おおよそのモデルが確定した段階で、システム化を行った。実際のシステム構築は外注する予定であるため、要求定義の作成を行った。

3. ソブリンリスク評価システムの事前評価
システムが完成された時点で、システムの事前評価を行った。検討事項はシステムのリアイアビリティーと予測精度である。その結果、これまで国際協力銀行で用いたれていたモデルに比較して格段の精度向上が確認された。

4. ソブリンリスク評価システムのバックテストの設計
システム運用後、一定期間経過後にバックテストを行うよていである。バックテストのタイミングと仕様について決定した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本研究の推進の費用の全ては国際協力銀行からの供出であったため、研究報告レポートおよび評価システムは国際協力銀行の所有物となっている。また、システムソースの著作権は金融工学研究所が持っており、公開されていない。
ただし、国際協力銀行は今回の研究成果の公表には理解を示しており、バックテスト終了のタイミングで公表される予定である。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

国際協力銀行、金融工学研究所共同の研究会・ミーティング(クローズド)8回開催した。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大重 斉

国際協力銀行

菊池 洋

国際協力銀行

吉田 晋也

国際協力銀行