平成132001)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

13−共研−2031

専門分類

6

研究課題名

微小地震の発生と月齢との相関

フリガナ

代表者氏名

イワタ タカキ

岩田 貴樹

ローマ字

Iwata Takaki

所属機関

University of Liverpool

所属部局

Department of Earth Science

職  名

Research Scientist(Postdoctoral fellow)

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

微小地震の発生と月齢との相関
リバプール大学 岩田貴樹
統計数理研究所 尾形良彦
 カナダのUndergrond Research Laboratoryでは地下坑道で、坑道周辺で発
生した微小地震の観測を行っている。1997年12月9日に始まった顕著な地
震活動は、一般の余震活動と同様に、時間を追うごとに活動度が減衰してい
るが、時として地震活動が増大することがあり、この増大は新月・満月の時
期に集中して起きているように見える。「地球潮汐」と呼ばれる太陽・月の
引力が地球に与える応力変化は、新月・満月の時期に大きくなるので、地震
活動度が月齢に呼応して変化することは物理的に十分あり得ることである。
そこで、上記の地震活動の増大と新月・満月の時期とが統計的に有意に相関
を持っているかどうかを、点過程モデルを用いて調べた。
 観測された1997年12月9日以降の地震発生の時系列が、活動度を減衰さ
せつつも、満月・新月の前後には活動が増大しているように見えることを考
慮して、以下のような2種類の点過程モデルを考える。月齢と無関係に微小
地震が生じているとするもの(以下、モデルA)、月齢に関係して微小地震
が生じているとするもの(以下、モデルB)、の2種類である。両モデルの具
体的な強度関数は以下のように表される。
モデルA:■(1)
モデルB:■(2)
モデルAは「改良大森公式」と呼ばれ、余震発生の時系列を表すのに標準的
とされているモデルである。これに月齢と関連する地震発生を表す項として
Acosθ(t)+|A|を加えたものがモデルBである。ここでθ(t)は、ある満月
(または新月)の時刻を0°、次の新月(または満月)の時刻を360°として、
その間の時刻を線形に角度に割り振ったものである。両モデルに対し、最尤
法を用い、観測された地震発生の時系列に最適となるパラメータセットを求
めた。さらに、それに対するAICも計算した。もし、地震の発生が統計的に
有意に月齢と相関を持って発生していれば、モデルBに対するAIC(以下、
AICB)の方がモデルAに対するそれ(以下、AICA)より、値が有意に小さ
くなる筈である。
 解析期間は顕著な活動が始まった1997年12月9日から1998年3月27日
までの約3ヶ月半とした。解析に用いられた微小地震の数は5189個である。
尚、解析期間の長さを2ヶ月から6ヶ月まで変えて解析を行ったが、以下に示
す解析結果に大きな違いはなかった。
 求められたパラメータ及びAICをTable 1に示す。ここに示したように、
AICBの値はAICAより20.3小さく、モデルBの方が有意に適合が良いこと
が分かる。さらに対数尤度比を用いた検定を行うと、「モデルAの方が適合度
がよい」という帰無仮説を棄却する有意確率は2.33×10-6と十分に小さい。
このことからもモデルBの方が有意によいモデルであること、即ち観測され
た地震発生の時系列と月齢との間に有意な相関があることが示される。さら
に、得られたモデルと実際の微小地震の活動の様子の比較をFigure 1に示す。
Figure 1:1日ごとの微小地震の個数(左側の縦軸)と推定されたモデル
による強度関数(右側の縦軸)。Underground Research Labo-
ratoryでは1日約9時間しか観測を行っていないため、観測さ
れた地震の個数と推定された強度関数の値に違いが出て来るこ
とに注意する必要がある。例えば、1日300個、微小地震が観
測された場合、これは強度関数では1日約800個に相当する。
縦の実線は満月・新月の時刻に対応し、横軸の原点は1997年
12月9日0時に対応する。
Table 1に示すように、モデルBにおける推定されたAの値はKに比べ
て非常に小さい。これは月齢による地震活動への影響度が小さいことを意味
すると考えられる。このことを確かめるために、モデルBにA=Kという

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・Iwata,T.and Young,R.P.,Tidal stress/strain and acoustic
emission activity at the Underground Research Laboratory,Canada,
EOS Trans.AGU,81,Fall Meet.Suppl.,918.2000.
・Iwata,T.,Tidal stress/strain and acoustic emission activity at
the Underground Research Laboratory,Canada,Geophys.Res.Lett.,2002
(印刷中)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾形 良彦

統計数理研究所