平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−96

専門分類

8

研究課題名

大量社会調査データ解析システムの基礎的研究

フリガナ

代表者氏名

サカモト ヨシユキ

坂元 慶行

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

10 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

最近、長期的な継続調査データや、国際比較調査データなど、大規模な社会調査データが一般化し、その有効利用が重要な問題になっている。この研究では、いくつかのデータ・セットを用意し、この種のデータに適した解析システムを開発するための基礎的な研究を行なう。


情報量統計学は統計モデルの想定と情報量規準によるその評価という二つの手続きによって現象を解析することをめざす統計学である。AICはこのために導入された評価基準の一つであり、最尤モデルの中でのモデル選択によって望ましい結果が得られる場合にはAICは有効である。しかし、このような方法がつねに望ましい結果を与えるとは限らない。たとえば回帰分析で不適切に次数の高い多項式回帰モデルを用いたすると、推定値を不安定にしたり、パラメトリック・モデルに特有のくせを持ち込むことになり、望ましい結果は得られない。
このような場合、推定値が滑らかに変わるという条件の下で尤度を最大化することによってパラメータの推定値を決める方法が有効で、赤池の提案したABIC最小化法に基づく推定法はこのための有力な方法である。しかし、このことは、同一の問題に対して、いろいろなモデルや推定法が競合する場面があることを意味する。そこで、これらのモデルよさを(推定法によらず)統一的に比較するための情報量規準が必要になる。
石黒・坂元は、1992年に、このための一つの情報量基準としてWICを提案したが、今年度は、北川の協力も得て、この基準をより一般的な表現にし、EICと名づけたそして、2値回帰分析や通常の多項式回帰の場合を例としてシミュレーションを行ない、EICの性能を評価するとともに、EICの導入が情報量統計学的アプローチに与えるインパクトについて考察した。
その結果、(1)EICはAICも使えるような状況では同程度以上にはたらき、(2)それ以外の状況でも、期待平均対数尤度の推定値の精度という面でもモデル選択の面でもほぼ満足できる結果を与えるばかりでなく、(3)EICの導入は情報量統計学により一層透徹した見方を与える、等の知見を得た。
また、他の共同研究者の指摘を得ながら、「東京定期調査」等のデータを例に、大規模社会調査データのデータ・ベースの作成に手を着けた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

坂元慶行、他,ABIC最小化法とEIC,日本統計学会,1993年7月24日。他

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

<研究内容>継続調査データや多地域同時調査データの統計的解析に有効な方法を開発するための基礎作業として、一方で、価値観や消費意識に関するいくつかの調査データを編集・整備し、他方で、現在の手法の問題点の整理や、統計的方法の試作等、基礎的な作業を行なう。
<共同研究の必要性>一般性のある統計的手法を開発するためには複数個のデータ・セットによるテストが不可欠である。そこで、計量社会学、経済統計学、消費者行動学等、いろいろな領域の専門家のさまざまな観点から提言を得たい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

上村 淳三

日本経済研究センター

海野 道郎

東北大学

佐野 美智子

日経産業消費研究所

直井 優

大阪大学

中村 隆

統計数理研究所

林田 実

北九州大学

Hunter John, Frederick

James Cook University

武藤 博道

日本経済研究センター