平成212009)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

21−共研−4110

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

亜熱帯島嶼地域における森林の持続的利用に関する数理モデルの構築

重点テーマ

フィールド生態学と統計数理

フリガナ

代表者氏名

エノキ ツトム

榎木 勉

ローマ字

ENOKI Tsutomu

所属機関

九州大学

所属部局

農学研究院森林資源科学部門

職  名

准教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では、野外調査による現象の理解と数理モデルによる分析をもとに、森林施業や土地利用などの人為インパクトに伴い天然林の構造・多様性・機能が劣化するリスクを実証的かつ理論的に解明することを目的とする。最終的に、種多様性と生態系機能の保全を考慮した亜熱帯林の生態学的管理の具体的指針を、本研究の成果として提示する。
 亜熱帯島嶼地域における常緑広葉樹林、河畔林、マングローブ林など様々な森林の持続的利用や保全策を数理モデルを用いて分析する。第一に、亜熱帯林の林木種多様性と生産量の時間的・空間的変動パターンを、野外調査によって明らかにする。第二に、林分レベルの森林動態を記述する数理モデルを構築し、亜熱帯林の時空間的異質性を創出するメカニズムを解明する。第三に、森林動態モデルを用いたシミュレーション分析により、森林伐採が種多様性と生産量の動態に及ぼす影響を定量化する。
 亜熱帯常緑広葉樹林において、野外調査で得られたデータに基づき構築した森林の動態を記述する個体ベースモデルを用いたシミュレーションでは、天然林の林分構造、林床での有機物分解過程などが地形や台風という撹乱に大きく影響を受けることが示されている。
 様々な森林施業シナリオをモデル上でシミュレーション解析し、人為インパクトが森林の構造・機能の劣化を引き起こすメカニズムを分析した。皆伐林分は、伐採面積が大きいほど、伐採前後での種組成の変異が大きかった。このことは、伐採面積が大きいと、周辺の森林から孤立し、メタ群集からの種子散布が欠乏することに起因すると考えられた。さらに木材生産性と林木種多様性との間に生じるトレードオフは、発達した森林に囲まれている林分を伐採した場合に緩和されることが示された。ただし、木材生産性と林木種多様性を両立させた施業を持続的に行うためには50年以上の伐期が必要であることが明らかとなった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文

Fujii S., Kubota Y. & Enoki T. (2009) Resilience of stand structure and tree species diversity
in subtropical forest degraded by clear logging. Journal of Forest research 14:373-387.

Fujii S., Kubota Y. & Enoki T. (in press) Long-term ecological impacts of clear-fell logging on tree species diversity in a subtropical forest, southern Japan. Journal of Forest research



学会発表

藤井新次郎・久保田康裕・榎木勉(2010) ニッチの差異に基づく林木種遷移の解析.日本生態学会第57回大会.東京

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

下記の研究会で成果をもとに議論を行なった。

重点的共同利用研究「フィールド生態学と統計数理」研究集会
日時:2009年10月29日-30日
場所:統計数理研究所
参加者数:40名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

楠本聞太郎

九州大学

久保田康裕

琉球大学

島谷 健一郎

統計数理研究所

藤井新次郎

九州大学