昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−74

専門分類

7

研究課題名

信州高原の野草中の微量元素濃度に関する多変量解析

フリガナ

代表者氏名

タンバラ ヒロシ

檀原 宏

ローマ字

所属機関

信州大学

所属部局

農学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

信州高原には,特色のある野草類が自生し,放牧家畜の飼料となっている。申請者は,これらの野草について,多種類の微量元素含量を測定し,その栄養,毒性を評価する研究を続けている。本研究はその一環として,多種類の草より得た2〜30元素含量のデータから,多変量解析の手法により,信州高原の野草中の元素濃度の特性を把握することを目的にして行なう。


〔実施状況〕
昨年度に引き続き,多変量解析の手法を用いて,微量元素濃度の草−動物間の移行のパターンを解析すべく準備を進めた。昭和63年6〜8月にかけて,試料を採集,調製した。10月より元素分析を開始する予定でいたところ,突然,京大原子炉の故障で分析が不可能となった。炉は今年度中は運転を休止するという。急據,他の実験炉(東海原研炉,立教大炉,武蔵工大炉など)に手配したが,すでに他の計画が充満し,とても追加利用は不可能という。止むを得ず予定を変更して,かねて別に実験を進めてきた,食肉鶏(ブロイラー)の含有遊離アミノ酸濃度のパターンを,主成分々析法によって解析することとした。
〔成果〕
鶏肉の味は,種々の成分の複雑な組合せによるが,とりわけ遊離アミノ酸や核酸塩基類が,呈味に大きく寄与していることが知られている。さいきん,ブロイラー肉の呈味品質の向上は,斯界の大きな目標の一つであり,その解明はきわめて重要である。そこで肉用鶏4品種を選び,各々3羽づつ反覆して飼養試験を行なった。終了後,それぞれの胸,脚部筋肉(可食部について)から20種類の遊離アミノ酸を定量した。20種類のアミノ酸の24群(2(肉の部位)×4(品種)×3(反覆)=24)について主成分々析を行なった結果,約50%の寄与率をもつ第1主成分と,約12%の第2主成分が得られた。あとは10%以下の小さな寄与率で,何れも注目すべきものとは思えない。
鶏肉に関するこれまでの知識より,この特徴ある第1成分は,胸,脚部の筋肉の部位に,次いで第2主成分を鶏の品種に比定した。したがって,肉用鶏筋肉中の遊離アミノ酸含量パターンの特徴は,その2/1が部位の違いによるものであり,それに比べて品種による相異は約1割強ていどであることがわかった。アミノ酸による呈味は,鶏の品種よりも筋肉の部位によるほうが,約4倍も強いことになる。
この結果は,ブロイラー肉質の改良に大きく貢献すると思われ,さらに豚,牛肉の味覚のうえに示唆を与えるであろう。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

第81回日本畜産学会総会,1989年3月30,31日(於東京農工大)で発表した。
檀原宏(信大農),唐沢豊(信大農),駒沢勉(統数研):
鶏筋中の遊離アミノ酸含量パターンの多変量解析
なおさらに解析を進めて,論文にまとめ,
酪農科学,食品の研究誌(英文)か
日本栄養食糧学会誌(和文)の
何れかに投稿掲載の予定である。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

これまでに,東信,中信の標高1000m以上の高原の自然草地より,多種類の野草を採集し,2〜30種類の微量元素(マンガン,亜鉛,コバルト…など)を定量した。このデータは一部,すでに62年度における本プロジェクト(共同研究)で,解析を実施した。本年は引きつづき,調査地点を拡大して,南信地域の野草の試料を採取し,元素含量の分析を行ない,前回同様の多変量解析を実施する。また,前回は,多変量のパターンをcharnoffのface graphによる図形表現することを試みたが,今回はなおこの方法をさらに重ねて検討する。さらに,多変量の数量的表現法である主成分々析,あるいは因子分析法なども試みたい。解析法も試行錯誤的な検討を必要とし,同時にその理論構成を確定せねばならず,さらに計算には大型コンピュータの使用が必須となるので,本研究には統計数理研究所との共同研究が重要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

駒澤 勉

統計数理研究所

建石 繁明

信州大学