平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−43

専門分類

5

研究課題名

大自由度複雑系のダイナミクス

フリガナ

代表者氏名

カネコ クニヒコ

金子 邦彦

ローマ字

所属機関

東京大学

所属部局

教養学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

9 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

自由度の大きい系の非線型ダイナミクスで見られる時空カオス、カオス的遍歴、粒子のからまり運動、ひきこみクラスター化等の統計的性質の定量化をおこなうとともに、ここで開発された方法論や概念を、沸騰、対流、雲の運動等のパタン動力学、少数粒子素のクラスター、また生態系の進化、細胞集団の分化と増殖、神経回路網の発達、更には生物情報処理への応用を考える。


非線形系の複雑な動的振舞に対して研究を行った。まず前年からすすめているCML(カップルド・マップ・ラティス)モデルによる熱対流の研究を進めた。モデルを作るにあたって、空間を格子状(i,j)sに離散化し、格子上の状態を記述する場の変数を選ぶ。ここでは、熱対流の定性的性質を記述するために最小限必要と思われる場の変数として温度E(i,j)と速度V(i,j)を選び熱対流に重要と思われる物理的機構として、浮力、熱拡散、粘性、圧力の効果を考慮した。
浮力は温度の高い格子は上昇するというダイナミクスで表し、熱拡散、粘性は離散化したLaplace演算子によって表現した。構成的に作った熱対流モデルは熱対流臨界点、時間空間間欠運動、ソフト・ハード乱流遷移に対して実験と良く一致した。また、対流ロールのカオス的遍歴、集団的なカオス運動などの新しい予言を行うことに成功した。さらに、これらの結果はこのモデルだけの特別なものかを調べるために我々が構成したモデルに変化を加えることにより、この事を確かめてみた。ここでは浮力と圧力の効果のダイナミクスがこれらの減少に持つ意義を確認した。
この他、流れのある系での時空カオス、カオスを用いた細胞分化の新しいモデル化を行った。特に後者では数値計算の結果、シンクロした増殖引き込みクラスター化アクティヴな細胞(化学物質を多く持つ)とそうでない細胞への分離が見出され、細胞社会の組織化への新しい視点をもつに至った。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

T.Yanagita and K.Kaneko,対流のCMLモデル,Physica D 投稿中
K.Kaneko and T.Yomo,細胞分化のモデル,Physica D75(1994) 89-102.
編集(金子邦彦、池上高志、津田一郎) Constructive Complenty and Artificail Reality(Elsevien). 1994年8月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

主に、いくつかの簡単化したモデルのシミュレーションによって、自由度の大きい複雑な系の様相を明らかにしていく。
特に(1)Coupled maplatticeを用いた対流のシミュレーションと実験との比較、温度分布の統計的性質の変化の検討。また、このモデルの拡張による雲のダイナミクスとその相変化のモデル化。(2)多自由度カオス系の統計的性質、隠れた相関による大数法則の破れの起源。(3)多自由度ハミルトン系における秩序化とエルゴード性の相克。特に、粒子のからまった秩序状態の存在と通常の統計力学的性質の関連。(4)多種の共存を可能にする生態系モデルの動的性質およびそのゆらぎの性質等に重点をおく。
これらは多自由度かつ強非線型系であり、従来の統計的性質を一部みたしつつも多くの新しい面もあり、数理統計との交流が重要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

池上 高志

東京大学

伊庭 幸人

統計数理研究所

小西 哲郎

名古屋大学

時田 恵一郎

大阪大学

中川 尚子

京都大学大学院

橋本 敬

理化学研究所

柳田 達雄

北海道大学

山本 知幸

東京大学大学院