昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−87

専門分類

8

研究課題名

縄文貝塚集落の領域問題における統計的分析

フリガナ

代表者氏名

ムラカミ マサカツ

村上 征勝

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

加曽利・姥山・堀之内貝塚等の世界最大の貝塚を含む東京湾沿岸貝塚文化は,従来の型式学的研究から大型貝塚と小型貝塚と貝塚を伴わない集落とに区分されてきた。この三者の関係をめぐり考古学者は論争を展開し,それなりの成果をあげてきたが,現状では今一歩のところで足踏みをしている
従来この種の問題にはほとんど統計手法が用いられておらず,そこで三者の消長,機能的関連,優位性の有無等を,空間分析やクラスター分析を導入し,環太平洋に広く見られる貝塚文化の,日本モデルを提出したいと考える。


現在の千葉市と市川市を中心として,千葉県の東京湾沿岸にある丘陵上には,今から1万年前から2千年前まで続く縄文時代に残された遺跡がたくさん存在する。
その中で貝塚を伴うものだけを数えても,世界最大規模の加曽利貝塚を始め,大小500以上の縄文貝塚が残っている。千葉県の東京湾沿岸地域は,環太平洋を広く眺めてみても,先史時代の一時期に,非常にユニークな文化を築いたことに驚かされよう。
今まで精力的な発掘調査を進めてきた考古学者は,従来の型式学的分類から,これらの遺跡を小型貝塚と大型貝塚として分類してきた。彼らの間では,これら二者のそれぞれの機能問題を始め,相互間の関連をめぐり議論を展開してきたが,ある程度の研究の進展はあったが,成果はいま一歩のところで停滞しているというのが現状である。
そこで我々の研究目的は,千葉県にある,今までに発見されたでき得る限りの多くの貝塚をもとにしたデータベースを作製し,それをもとにこれら二つのタイプの遺跡の典型モデルを提出し,その上で両者の時間的推移,機能的関連,優位性の有無等を,統計分析を通して検証することにあった。
ここ1年間,我々の進めてきた作業は,昨年から続く遺跡リストの完成と,それぞれの遺跡がもつ情報をもとにデータベースを作製することであった。ロータス123を使い,場所,規模,時期,出土貝その他の情報を入れたが,かなりの量になった。今後は,遺物をインプットしなければならず,この作業も大変に時間がかかりそうである。
データベースが完成したときは,次に空間軸(地理条件),時間軸(時期別),遺跡規模,残存貝の多少等をもとに各種モデルを考え,その中でも価値あるモデルを選別し,それらのモデルの特徴を検証することを予定している。そして次のステップとして,貝塚集落の領域問題にせまることを考えている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

大型貝塚は,周辺の小型貝塚や貝塚を伴わない集落構成員による貝処理の共同作業場とみなす説と,単に長期にわたり生活・廃棄した故に大型になったという相対する理論がある。従来の研究があまりに土器に主眼を置いたのを改め,本研究では各遺構・遺物を等価値にとらえ,データベースを作り,質及び量的分析を含めた統計処理を行う。
昨年度の下調べから判明したのは,中期・後期に出現する大型貝塚が38,同時期の小型貝塚は61,貝塚を伴わない集落が530であった。以上の遺跡を地図上に地点で示し,次に大型貝塚を核に空間分析を行い,それぞれに入った小型貝塚や貝塚を伴わない集落を分解する。ひとつの大型貝塚の衛星圏に入った各遺跡が,堅穴住居形態,土器形式,宗教的遺物の有無,炉址型式,装飾品等のデータをもとに,果して他の衛星圏の遺跡と相違を示すかどうか,クラスター分析を試みる。大型貝塚のテリトリーの問題に関連する,考古学界における非常に重要なテーマに係ることになる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

植木 武

共立女子短期大学